アレルギーと免疫 -その1-

みなさん、アレルギー性鼻炎を知らない人はいないでしょう。くしゃみ、鼻水、鼻づまりの3症状はあまりにも有名です。でも、アレルギー性鼻炎について、どこまでしっかり理解しているでしょうか。
アレルギーって何? どうして起こるの? 
今回は、みなさんが知っているつもりでじつは知らないアレルギーについて、お伝えしたいと思います。

アレルギー

アレルギーという言葉はあまりにも有名です。「アレルギーですね。」「薬のアレルギーでしょう。」「人によってアレルギーが起こります。」など。
アレルギーとは一体何でしょうか?
アレルギーとは、じつは免疫応答のことなのです。
今回は退屈ですが、すこし免疫の話を聞いてください。

免疫の講義です…

私たちの体には、自分で自分の身を守るためのさまざまな機能が備わっています。転んで擦りむいても、包丁で指を切っても、カットバンを貼っておけば、たいていの傷は化膿することなく、自然に治ってしまいます。また同じ小さな傷なのに、ある人はすぐ治り、ある人は化膿して感染症を発症することもあります。これらはすべて、「免疫」という働きのおかげです。では免疫とは何なのでしょう?

免疫とは?

免疫とは何でしょう?
免疫とは「異物を排除する働き」のことです。
でも何でもかんでも異物と認識したら、自分の細胞や臓器まで排除しようと働いてしまいますね。しかし、体の免疫システムは本当に良くできています。自分の細胞や臓器は異物と思わないのです。外から入ってきた細菌やウィルスなど、自分の知らないものを異物と認識して排除しようと働くのです。この免疫システムは大きく、液性免疫と細胞性免疫の2つに分けられます。
液性免疫は、B細胞が主役で抗体を産生します。
細胞性免疫は、T細胞が主役で免疫細胞が活躍します。

T細胞とB細胞

指に小さな切り傷ができると、体の外側を覆っている皮膚のバリアが途切れて、皮下組織や小血管が露出します。そこから細菌やウィルスが血管や周囲の組織に入り込んできます。すると、白血球の1つであるマクロファージ(大食細胞)がどんどん傷口に集まってきて、細菌やウィルスを飲み込んで殺してしまいます。相手が強いと、ヘルパーT細胞に抗原(細菌やウィルス)を提示して助けを求めます。ヘルパーT細胞は、殺し屋のキラーT細胞に、細菌やウィルスをやっつけるように頼みます。ヘルパーT細胞は、同時にB細胞にも頼んで、B細胞が形質細胞に「抗体」を作らせるのです。こうやって増えた免疫応援隊=①キラーT細胞、②NK細胞(ナチュラルキラー細胞)、③産生された「抗体」が、細菌やウィルスなどの「抗原」を殺してしまうことで、体を外敵から守っているのです。これが、免疫の1次応答です。1次応答のときの抗体は、主にIgM抗体で、初戦なのですこし苦労します。後により強いIgG抗体が作られます。
産生されたIgG抗体は、つぎに同じ抗原(細胞やウィルス)が入ってきたときのために記憶される仕組みになっています。初戦で戦ったT細胞やB細胞の一部が生き残って、メモリーT細胞やメモリーB細胞となってその役目を果たします。
次に同じ細菌やウィルスなどの「抗原」が体内に入ってきたとき、メモリーT細胞やメモリーB細胞は、前回戦った記憶があるため、初戦よりすばやく反応します。このとき作られる抗体はIgG抗体で、1次応答のときよりも長く強力に働きます。

ここまで長々と複雑な免疫の講義をしてきましたが、これが何故アレルギー性鼻炎につながるのでしょうか? じつはアレルギー性鼻炎も立派な免疫応答なのです。もう少しだけ、付き合ってください。

どんな抗体?

免疫の1次応答、2次応答ではたらく抗体がそれぞれ、IgM抗体、IgG抗体でした。
B細胞が形質細胞に指令を送って、形質細胞が産生する抗体には、IgM 、IgG 、IgE、IgA 、IgDの5種類あります。Igとは免疫グロブリンの略です。Igはタンパク質で5つとも少しずつ構造が違います。前者2つはわかりますね。
アレルギー性鼻炎に関係する抗体は、じつはIgE抗体なのです。IgE抗体は、即時型の反応といって異物に対してごく短時間で免疫応答が起こるとき働く抗体です。
やっと少しだけつながってきましたね。

アレルギーとは?

再度、アレルギーの話にもどります。
アレルギーは免疫応答の1つです。
免疫応答のバランスが崩れて、特定の物質に対して過剰に免疫応答が起こってしまう状態です。
例えば食物アレルギー。牛乳、卵、大豆、小麦粉。ピーナッツ、落花生。エビ、カニ、牡蠣、サバ。バナナ、キウイ、メロンなど特定のフルーツ。そもそもこれらは食物であり、ふつうは異物として認識することはありません。ところが、免疫応答のバランスが崩れると、特定の無害な食物に対しても、激しい免疫応答が起こってしまいます。
例えば花粉症。花粉症のない人は60%います。同じ大量の花粉を吸入しても全く免疫応答が起こりません。しかし一度、花粉を異物と認識してしまうと、過剰な免疫応答によりひどい花粉症が発症するのです。花粉に対する過剰な免疫応答。これが花粉症の正体です。
ハウスダストによる通年性アレルギー性鼻炎も同様です。
そうです。花粉症、通年性アレルギー性鼻炎は、免疫応答だったのです。
アレルギー以前に。

アレルギー性鼻炎

アレルギー性鼻炎は免疫応答です。
それも、免疫応答のバランスが崩れた過剰な免疫応答であることがわかりました。

ハウスダストや花粉に鼻粘膜が暴露されたとき、過剰な免疫応答が起こると、ハウスダストや花粉を異物と認識して、ハウスダストや花粉に対する抗体が作られます。このときの抗体はIgE抗体です。作られたIgE抗体は、細胞内にたくさんの顆粒をもつ肥満細胞の表面に突起状にくっつき、つぎの抗原を待ちます。次に抗原(ハウスダストや花粉)が鼻粘膜にくっつくと免疫応答が起こり、抗原のタンパク質の一部が肥満細胞表面のIgE抗体と抗原抗体反応を起こします。すると、肥満細胞からヒスタミンを初めとする多くの化学伝達物質(ケミカルメディエーター)が放出されます。このヒスタミンやロイコトリエンが鼻粘膜の血管や神経に作用して、通年性アレルギー性鼻炎や花粉症に特有の、くしゃみ、鼻水、鼻づまりを引き起こすのです。

おわりに

最後にやっと、アレルギー性鼻炎とつながりました。ほっとしています。
私たち耳鼻咽喉科医が主として扱っているアレルギー性鼻炎は、医学の中で非常に重要で深遠な研究領域である「免疫学」に深く根ざしていることがご理解いただけたと思います。
今回は、基礎医学のお話でした。

免疫応答は、体中のあらゆるところで起こっています
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嗅覚・味覚障害   新型コロナウィルスによる -その1-

世界中で新型コロナウィルス感染症が猛威を振るっています。新型コロナウィルス感染症(以下、新型コロナと略します)の特徴として、かなり早い段階から、嗅覚や味覚がなくなることが指摘されていました。

今回は、嗅覚、味覚障害と、新型コロナについて、現在までにわかっていることを中心に書きたいと思います。

嗅覚・味覚障害

皆さんもお気づきのように、嗅覚や味覚の診断治療は、耳鼻咽喉科が担当しています。なので、われわれ耳鼻咽喉科医も、かなり早期の段階から、新型コロナによる嗅覚味覚障害と、一般の鼻疾患や口腔疾患による嗅覚味覚障害とを、厳格に区別することに慎重に対応してきました。

それって新型コロナ?

初診の患者さんが嗅覚障害で受診されたとき、発熱の有無はあまり参考になりません。もちろん発熱やせき、息苦しいなどの症状を伴っていれば、その時点で新型コロナ感染症が疑わしいと判断されますので、院外でのPCR検査を実施します。PCR検査で陽性か陰性かを判定するまでは、通常、院内での診察は行いません。

問題は、嗅覚、味覚障害だけを訴えて受診される患者さんです。この場合は、問診が非常に重要になります。

感染疑いの場合、基本的に車内に待機してもらい、問診は電話等を使用して行います。

嗅覚や味覚の障害が、突然起こったのか、徐々に起こったのか。匂いは全くわからないのか、少しはわかるのか、などが重要な点です。1週間以内に感染拡大地域からの帰県や県境を跨いでの移動があったか、職場や家族に感染者や熱発者がいるかどうか、濃厚接触の有無、クラスターの発生状況などの情報があれば、できるだけ詳しく聞きます。
とくに本人、家族に感染症状としての異常がみられなくても、本人の通う職場や学校、行き来のある親戚、友人、さらに人の集まる公共施設など、時間と空間を共有する人間関係の全てが感染源の対象となります。

鼻づまりや鼻水など、鼻の症状と同時に匂いがしなくなった場合は、ウィルス性鼻副鼻腔炎などによる疾患の可能性がありますが、この場合も、突然全く匂いを感じなくなるような嗅覚障害は起こりにくいのが現実です。
今回の新型コロナに限らず、以前より冬に流行していたライノウィルス、アデノウィルス、RSウィルスなどは、ウィルス性嗅神経炎を起こすことが知られており(感冒後嗅覚障害)、嗅覚がなくなる原因になりますので、より一層判断が難しくなります。

味覚は一般に嗅覚ほど鋭敏でなく、嗅覚の影響も受けるため、味覚障害の診断は問診だけでは困難です。したがって、新型コロナが否定できないときには、症状をまず嗅覚障害だけに絞って、上記のことをよく検討する必要があります。
感染の可能性があると判断されれば、院外でのPCR検査を行います。

突然の嗅覚脱失

新型コロナに特徴的な嗅覚障害は、ある日突然の嗅覚脱失です。脱失とは全く匂いを感じないことです。鼻の症状がなくて、突然嗅覚脱失が起これば、まず新型コロナの可能性を疑ってPCR検査をする必要があります。発熱や咳、息苦しいなどの呼吸器症状は、出現する場合もあれば、ほとんど無症状で経過する場合もあるため、必要と判断されたら、積極的にPCR検査を実施することが望ましいと言えます。

PCR検査

PCR検査は、もちろん院外で、周りに人がいない状況下に行います。PCR検査の方法は、検体採取に2通りあります。1つは鼻腔ぬぐい液。1つは唾液です。唾液は専用のプラスチックキャップに自分で唾液を入れてもらい、回収して検査します。これは患者さん一人ででき、車の中で検体採取が可能ですので、検査者と患者さんが接触しにくい環境です。一方、鼻腔ぬぐい液では、検査者が、感染が疑わしい患者さんの鼻腔に専用の綿棒を入れて、何回か鼻粘膜を擦過しますので、反射的に咳やくしゃみの暴露の可能性があり、サージカルマスク、フェイスシールド、手袋、帽子、防護服、などの装備を必要とします。
われわれ耳鼻咽喉科医は、鼻腔のスワブ(粘膜擦過)操作には熟練していますので、患者さんの真横から、または後ろ側に回って鼻腔内の綿棒操作が可能です。したがって、比較的安全にPCR検査を行うことが可能です。

オミクロン(ο)株

新型コロナウィルスは、突然変異を繰り返しながら感染拡大を続けるウィルスです。ギリシャ文字の表記にしたがい現在までに、α、β、γ、δ、など順に、μまで12種類の変異株が報告されています。オミクロン株(ο)は、変異株13番目、15番目のギリシャ文字です。

デルタ株は、非常に重症化しやすく危険でしたが、オミクロン株は重症化率も低く、一般には軽症と言われます。ただし、感染力が非常につよく、潜伏期間も短いため、より一層の注意が必要です。
オミクロン株では、従来の新型コロナウィルス感染症に特徴的であった嗅覚障害、味覚障害の発生頻度が非常に低くなっています
発熱72 %, 咳58%, 全身倦怠感50%, のどの痛み44%, 鼻水鼻づまり36%, -以下 – 嗅覚・味覚障害2%となっています。(沖縄県のオミクロン株陽性者50人のデータより転載)
また、ノルウェーでのオミクロン株81人集団感染による論文(2021)では、咳83%, 鼻水鼻づまり78%, だるさ74%, のどの痛み72%, 発熱54%, -以下- 嗅覚異常12%, 味覚異常23% となっています。
従来までは、突然の嗅覚障害、味覚障害の発症は、新型コロナを疑う非常に大きな診断のためのツールであると考えられていました。

欧州の他施設共同アンケートによる、軽症から中等症の新型コロナ451人のデータでは、嗅覚障害85.6%, 味覚障害88.0%であったと報告されています。
また、米国カルフォルニア大学での新型コロナPCR検査陽性者59人のうち、嗅覚障害40人(68%)、味覚障害42人(71%)であったとの報告があります。
さらに、欧州のデータでは、嗅覚障害の重症度は、79.6%が嗅覚脱失、20.4%が嗅覚低下であったことより、嗅覚障害の重症度はかなり高いと報告されています。

以前は、新型コロナを疑い、PCR検査を行うかどうかの判断に大きく関係したのが、この嗅覚、味覚障害でした。

ところが、オミクロン株では、従来の新型コロナにみられた嗅覚障害、味覚障害がわずかしかみられません。したがって、嗅覚障害、味覚障害の症状は、オミクロン株では、新型コロナ感染症の指標にはならないのです。
さらに、従来の新型コロナウィルス感染症では、小児では47%, 成人では32%, 高齢者では20%が、無症候性感染者(無症状)であることが報告されていました。
オミクロン株では、無症候性感染者の割合は、27%(日本), 4%(日本), 20%(デンマーク), 1.2%(ノルウェー)と報告はまちまちです。これは、感染者個人の年齢や合併症、当時のワクチン接種状況などの条件が違うことも関係していると思われます。しかし、いずれの場合でも、一定数の無症候性感染者が存在することは、オミクロン株に限らず、新型コロナウィルス感染症の診断を困難にしています。

耳鼻咽喉科の外来

新型コロナウィルス感染症について、すべてを網羅することは、不可能です。
それは、ウィルス表面のスパイクタンパクの変異やヒトの細胞表面のACE受容体との親和性、mRNAワクチンによる抗体産生に至るまで、すべてにおいて、ウィルスの変異が速すぎるために、世界中で研究が追いつかないからだと思います。
この項でも、新型コロナと嗅覚、味覚障害について書いていましたが、書いている途中で、オミクロン株では嗅覚味覚障害が診断には有用ではないことが途中報告されて、困惑しています。

ただし、やはり突然、嗅覚味覚障害が起こったときは、新型コロナ感染を疑うべきだとは言えるでしょう。そのときは、まず、かかりつけの耳鼻咽喉科に電話してください。そして電話の指示に従ってください。直接受診すべきではありません。もし新型コロナに感染していれば、いたずらに濃厚接触者を増やし、感染を拡大することになるからです。
自分の大切な人を守りたいのと同じように、他の人の大切な人たちも守ってあげてください。お願いします。

突然、カレーの匂いも味もなくなったら…(イメージ)

花粉症について -その2-

前回の「花粉症-その1-」で花粉症について大まかに理解していただけたと思います。今回は、花粉症の病態と治療について、より詳しく述べたいと思います。

花粉症とアレルギー性鼻炎?

「アレルギー性鼻炎はありますか?」と尋ねると、「いいえありません。花粉症ならありますけど。」と答える方がいます。
「花粉症はアレルギー性鼻炎である」ことを知らない方が意外に多いことに驚かされます。
そうです。花粉症とは「季節性のアレルギー性鼻炎」のことなのです。アレルギー性鼻炎には2種類あって、一つは「通年性」。これは、ハウスダスト、ダニが原因のアレルギー性鼻炎。もう一つは「季節性」。これが、さまざまな花粉によって起こる花粉症です。その代表がスギ花粉症。
なので花粉症の症状は、「くしゃみ、鼻水、鼻づまり」で、アレルギー性鼻炎そのものです。実際はこれに「目のかゆみ」が加わりますが。

最近、花粉症の薬が効かないんです…

「花粉症はアレルギー性鼻炎」なので、花粉症の治療は、基本的にアレルギー性鼻炎の治療と同じです。抗アレルギー薬による内服治療とステロイド鼻噴霧型スプレーによる治療が行われます。
多くの方は、毎年これらのお薬と点鼻スプレーによる治療で花粉症をなんとか乗り切ることができます。(花粉症-その1-)
しかし時々、お薬のまったく効かない方、効きがわるい方、以前は効いていた薬がだんだん効かなくなってきたという方がいます。
同じ花粉の飛散を受けているのに、どうしてこんなに違うのでしょうか?
その原因はいくつかありますが、一つは、「通年性のアレルギー性鼻炎」があるかどうかです。

通年性があるとどうなるの?

花粉症は別の切り口で分類すると、2つに分けられます。(これは学術的に正式な分類ではありませんが。)
一つは、花粉症だけの場合。もう一つは、通年性の(ハウスダストの)鼻炎に花粉症がある場合。
通年性鼻炎は、一年を通してアレルギー性鼻炎が起こっています。
花粉症単独の場合は、花粉によるアレルギー性鼻炎だけが起こります。
通年性鼻炎に花粉症がある場合は、ハウスダストやダニによって起こっている鼻炎に、花粉によって起こる鼻炎が上乗せされて、いわばダブルでアレルギー性鼻炎が起こることになるのです。
なので一概には言えませんが、通年性鼻炎がある方の花粉症は、当然、花粉症単独の方よりもひどくなりがちですし、お薬も効きにくくなります。もちろん、花粉による鼻炎とハウスダストやダニによる鼻炎が同時に起こっていても症状が2倍になるわけではありません。もともと鼻づまりや鼻水が出やすい鼻にさらに悪化させる原因(花粉)が加わって症状がひどくなると理解してください。

通年性鼻炎はどうすればわかる?

血液検査で調べることができます。
RAST検査といって、血液中のアレルゲンに対するIgE抗体を測定することで、通年性の鼻炎や花粉症を含めたアレルゲンの総合的な診断が可能です。
また血液検査をしなくても、鼻の粘膜にアレルゲンディスクを置いて反応を調べることで簡単に診断する方法もあります。
毎年花粉症がひどい方、お薬が効かない方は、一度検査をされてみると良いかもしれません。

ほかに薬が効かない原因は?

花粉症の症状がひどくなる原因に、代表的なものがもう一つあります。
鼻中隔わん曲症です。
これは、鼻中隔(びちゅうかく)という、左右の鼻腔を分ける軟骨と骨の仕切り板が大きく左右どちらかに曲がっていて、片方の鼻腔を狭くしている疾患です。
鼻中隔わん曲症があると、ふだん花粉症がないときは、片方の鼻の通りがそれほど悪くないことも多く、鼻づまりの症状はときどき起こるくらいですが、いざ花粉症の症状が起こるとふだん通りが良い方の鼻腔もつまってしまうので、鼻づまりの症状がひどくなります。
さらに鼻中隔わん曲で狭くなっている方の鼻腔は、もともと狭い鼻腔に花粉症によって鼻粘膜の腫れが起こっているので、お薬や点鼻スプレーが効きにくく、花粉症の症状がよりひどくなってしまいます。ほとんど鼻から呼吸ができずに口呼吸になることもしばしばです。

鼻中隔わん曲症の診断は?

鼻中隔わん曲症の診断は簡単です。
鼻鏡やファイバースコープで鼻の中を観察するだけでわかります。
鼻中隔わん曲が高度な場合や鼻腔後方の複雑なわん曲があるときは、CTを撮影することで、立体的な構造の異常を正確に診断できます。

通年性やわん曲症があるときの治療は?

通年性鼻炎や鼻中隔わん曲症があっても、花粉症のお薬が効果があれば、治療はふつうの花粉症の治療と同じです。
通年性鼻炎や鼻中隔わん曲症があり、花粉症の症状が毎年ひどかったり、お薬が効かない、効きにくい場合に、治療方法を考える必要があります。
鼻中隔わん曲症に対するもっとも標準的な治療は手術です。
片方の鼻腔が骨のわん曲で物理的に狭くなっていることが鼻づまりの原因ですから、手術によってわん曲を矯正します。あわせて下鼻甲介の手術を行うことが多く、手術によって鼻づまりは劇的に改善します。

手術した方がよいかわからない…

手術を受けた方が良いかどうかは、主治医とよく相談する必要があります。
自分がどれほど花粉症を苦痛に感じているか、どこまで治療を希望するかなど、いくつかの点を考慮して、総合的に判断するのが良いと思います。
病態と治療は必ずしもイコールではありません。
症状がひどくても、従来の治療で良いと考える方もいますし、手術によって劇的な症状の改善を期待する方もいるでしょう。
どちらを選択するかは、患者さん一人一人の希望によって決めたら良いと思います。

手術以外の治療法は?

鼻中隔わん曲症は手術以外に、良い治療方法はありませんが、通年性鼻炎の治療については、いくつかの選択肢があります。

舌下免疫療法
レーザー治療
アルゴンプラズマ凝固
等です。

舌下免疫療法は、スギ花粉のエキスを少量ずつ体内に吸収させて抗体を作り、花粉による過敏症を抑える治療です。非常に有効ですが、花粉症以外の季節にも治療を継続しなければならないこと、治療を最低1年、通常は3年間継続しなければならない時間的なデメリットがあります。
レーザー治療、アルゴンプラズマ凝固は、舌下免疫療法に比べて、どちらかというと外科的治療に近い感覚です。どちらも外来診療で局所麻酔で簡単に施行できます。ただし、症状の改善度に個人差が大きいこと、再発があることを知っておいた方が良いでしょう。当院では、重症のアレルギー性鼻炎でレーザー治療後の再発例を数多く手術しています。ですから、レーザー治療で花粉症やアレルギー性鼻炎が完治すると思い込むのは危険です。もちろん症状が少しでも改善するなら行う価値はあります。
乳酸菌を含むヨーグルト、カテキンを含むお茶などは、一定の効果があると言われています。(花粉症-その1-)

おわりに

花粉症にかぎらず、鼻がずっとつまっているのは、つらい症状です。慢性の鼻水や鼻づまりでお困りのときは一度、耳鼻咽喉科へご相談ください。主治医がご本人の希望に沿った、オーダーメイドの治療を提案します。

 大量に飛散するスギ花粉 2

 スギの球果のクローズアップ

新型コロナワクチン第3回接種のお知らせ

新型コロナワクチンの第3回接種を開始します。
接種券をお持ちの方が対象です。

令和4年2月1日火曜日スタートです。

毎週火曜日の午後4:00-5:00に予約制にて受け付けています。
予約は、当院へ直接お電話いただくか、またはホームページからWEB予約が可能です。

お電話:0985-23-6597   
WEB予約:当院HP Web予約 からクリック

厚生労働省及び宮崎市保健所からの通達で、日本国内で第3回接種に使用するワクチンは、ファイザー社製、モデルナ社製の両方ですが、現在ファイザー社製ワクチンは入荷制限があるようです。
当クリニックでは、全例、ファイザー社製ワクチンの接種を予定しています。ワクチンのバイアル数に限りがありますので、ご希望の方は、早めにご予約ください。
厚労省からの通達、指示などで今後、予定変更の可能性があります。
変更があり次第、早急にご連絡いたします。

2022年4月




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診療時間:火・金・土
午前:9:00〜12:00 / 午後:14:00〜18:00
水・木曜日は手術日です。

鼻中隔わん曲症

耳鼻咽喉科の鼻の疾患で、もっとも頻度が高いものの1つが、鼻中隔わん曲症です。
今回は、鼻中隔わん曲症について、書いてみます。

鼻中隔とは?

鼻中隔とは、左右の鼻腔を分けている仕切り板です。鼻中隔は軟骨と後方の2つの骨との3部分から構成されています。わん曲症と聞くと、いわゆる顔の「鼻筋 (はなすじ) 」の曲がりと思う人がいますが、全然違います。鼻中隔は自分で見えません。

わん曲とは?

曲がっていることです。
鼻中隔は、顔を正面から見て、前後、左右、上下の3方向にわん曲できるので自由度が高く、じつにさまざまな形態があります。数学のXYZ軸を考えてみてください。どの軸の方向へも曲がります。もちろん解剖学的な制限はありますが。鼻中隔わん曲症は、どれ一つ同じものがありません。CTなどで同じように見えるものも、手術のときには僅かずつ違っています。

わん曲の特徴は、鼻中隔が1つの軟骨と2つの骨で構成され、下方でさらに上顎と口蓋の2つの骨と接続していますので、その2つの骨の接続部分で鋭角に曲がりやすく、さまざまなパターンを生みます。。棘(とげ)のような骨の突起を形成していたり(棘 =きょく)、緩やかなカーブを描いたり、飛びだした骨が棚のように張り出していたり(櫛 =せつ)、と手術中に、それこそ無限の組み合わせがあるのでは、と思ってしまいます。また1つの軟骨は、後方と下方の骨の接続部で斜めに傾きやすい傾向があり、前方から鈍にわん曲していることもあります。
わん曲症の成因は諸説ありますが、治療に関係ないので、ここでは省略します。
わん曲は、軽度のものから、かなり高度のものまでありますが、成人の90%にわん曲症があると言われています。

症状は?

鼻づまりです。
1側または両側に起こります。一般に鼻中隔わん曲症は、凸側がつまりやすいのですが、凹側の下鼻甲介は代償性に肥大することが多いため、凹側の鼻づまりがひどいこともあります。また、慢性的な鼻づまりによる、副鼻腔炎の合併や鼻腔後方の通気不良による嗅覚障害や頭痛があったりします。鼻中隔の棘、櫛が鼻甲介に食い込むことで、鼻腔内の三叉神経刺激による頭痛が起こることもあります。
一側性の鼻づまりは、患者さん本人も慣れてしまっていることも、しばしばです。

診断は?

鼻中隔わん曲症の診断は簡単です。
鼻の中を鼻鏡という器械で見ると肉眼でもわかります。さらに後方はファイバースコープで観察できます。
CTを撮影すると、左右の鼻腔の奥まで立体的な構造が把握できますので、わん曲症の正確な診断が可能です。さらにCTでは、左右の鼻甲介の位置と肥大を正確に診断できるので、鼻腔通気の状態が一目瞭然です。左右の鼻腔通気の不良やアンバランスによる副鼻腔炎の合併もCTで診断できます。CTでは代償性肥大も正確に診断可能です。したがって鼻中隔わん曲症の診断にはCT撮影が欠かせません。
鼻づまりは、鼻腔通気度検査を行って客観的に評価できます。しかし、鼻腔通気度検査の数値は、nasal cycle という自律神経による下鼻甲介の交替性鼻閉のために、軽症と判断してしまう危険性がありますので、数値の評価には十分注意する必要があります。あくまで、鼻内視鏡検査(ファイバースコープ)やCT、鼻の症状とあわせた総合的な判断が重要です。

治療は?

根治的な治療は、手術です。
鼻中隔矯正術を行います。
解剖学的な異常ですので、根本的に治すには手術が必要です。
手術を回避したい場合は、内服治療、点鼻薬治療になりますが、症状の根治的な改善は、なかなか望めません。内服薬で無理やり鼻づまりだけを一時的に解消しようとしても、内服をやめると、すぐに元どおりに鼻がつまってしまいます。
鼻中隔矯正術は、単独で行うことは少なく、下鼻甲介の手術とあわせて行うことが一般的です。

手術はどうするの?

鼻中隔わん曲症の手術については、当院ホームページ上に記載しています。ご覧ください。簡単に説明すると、

1. 全身麻酔で、
2. 鼻の穴からの内視鏡で、
3. 15-20 mm の粘膜切開で、

終了します。
鼻中隔わん曲症単独の手術は、10-20分間です。実際は他の手術(下鼻甲介など)と合わせて行うことが多く、手術時間はもっと長くなります。簡単な手術の一つです。
わん曲症の高度な例を除いては、軟骨は切除せずに保存します。
年齢的に、通常15歳以上で行います。

放置すると?

放置して絶対に良くないことはありません。
鼻中隔わん曲症で、全く鼻づまりを感じない場合は、かなり軽症か、すでに鼻づまりに慣れてしまっているかのどちらか、です。

鼻中隔わん曲症で鼻づまりを自覚する場合は、次の2つのことが重要になってきます。1つは、慢性の鼻づまりによる苦痛。もう1つは、夜間の睡眠時無呼吸症候群。とくに後者は、自覚しないことが多く、家族もいびきが特別大きいくらいに思っていることが多いので、注意が必要です。睡眠時無呼吸が長期間続くと、睡眠の質の低下だけでなく、将来的に、心臓血管、脳血管の大きな病気を発症する確率が非常に高くなることが報告されています。これが最も注意を要する点です。

口呼吸の弊害?

鼻づまりによる口呼吸は、鼻づまりによる苦しさや不快感だけでなく、睡眠時無呼吸症候群や、そのほかにも風邪やインフルエンザに罹患しやすいなど、じつはさまざまな悪影響があります。自分の症状だけでなく、ご家族や子供さんをよく観察してあげて、口呼吸になっているようでしたら、気をつけなければなりません。一度、近くの耳鼻咽喉科の主治医に相談されると良いと思います。

いつも片方の鼻がつまっている (イメージ)