くしゃみ

誰もがする、くしゃみ。
でも、そもそもくしゃみってどうして起こるのか、知っていますか?

くしゃみとは何?

くしゃみは、鼻粘膜刺激による延髄の反射とそれによって起こる急激な呼吸運動です。
1回または複数回の深い吸気の後、肺内圧が急上昇し、呼吸筋の短時間のつよい収縮によって、激しい爆発的な呼気を起こして、鼻腔内や口腔内から空気とともに体内へ侵入しようとする異物やウィルスを吹き飛ばして除去しようとする、生体の防御反応の1つです。

くしゃみは何故でるの?

すこし専門的に述べますと、
①鼻の粘膜には、三叉(さんさ)神経の末梢枝が張り巡らされています。鼻粘膜が刺激を受けると、三叉神経終末の知覚受容体からの電気信号が三叉神経の脊髄路核へ伝達され、延髄網様体のくしゃみ中枢に送られます。
②延髄網様体のくしゃみ中枢から信号伝達された、脊髄前角・横隔神経核、三叉神経運動核、顔面神経核、疑核、舌下神経核から、即座に反射路を介して電気信号のインパルスが送られます。
③このとき、横隔神経核と脊髄前角から深吸気を、疑核と反回神経から声門の閉鎖を起こして、肺内圧を急激に高め、爆発的な空気の呼出の準備がなされます。
④その後、6本の脳神経(5,7,9,10,11,12)と、横隔神経、肋間神経、頚神経、腕神経叢を経由して、横隔膜、肋間筋、腹筋、補助呼吸筋、咽喉頭筋、表情筋、舌筋、咀嚼筋、などに電気信号が送られて一瞬で強大な呼気を起こします。
⑤鼻粘膜の三叉神経の刺激は、くしゃみ中枢と同時に分泌中枢=橋延髄網様体の唾液核へも伝達されるため、唾液核から翼口蓋神経節を介して、鼻粘膜へ鼻汁分泌の刺激が送られて、水様性鼻漏(水のような鼻水)の分泌が起こります。このため、くしゃみ発作に連続して、水様性の鼻水が多量に出るのです。

光刺激によるくしゃみ発作の機序はすこし違います。
①光刺激が網膜の視神経を興奮させ、視蓋オリーブ核から中脳の対光反射中枢 (動眼神経副核、Edinger-westphal 核) へ伝達され、動眼神経から毛様体神経節へ戻ります。毛様体神経節から短毛様体神経が眼球内に入り、瞳孔括約筋に作用して、眩しいときに縮瞳(瞳孔が狭くなり光の量を減らすこと)が起こります。
これが、通常の対光反射です。
②この神経経路の対光反射中枢までの入力は同じですが、対光反射中枢から翼口蓋神経節につながる神経があり、翼口蓋神経節からの神経が鼻粘膜を刺激して、鼻粘膜の充血と鼻汁分泌が起こります。鼻粘膜の充血と鼻汁分泌が起こると、その刺激が三叉神経を経由した前述の①-⑤の反応が起こり、同じように、くしゃみと鼻水がでるのです。
この光刺激によるくしゃみは、光刺激によって、眩しいと感じて瞳孔が収縮するまでの反応(対光反射)のごく短い時間に、突然起こるのが特徴です。通常、単発または2回ほどまでで、それ以上連続しません。

その他、顔面の皮膚刺激も、三叉神経を経由してくしゃみ中枢へ伝えられるため、くしゃみを誘発します。通る神経回路は、鼻粘膜刺激と同じです。

すごく複雑な神経回路です。よく理解できなくて当然ですし、その必要もありません。
一体何が言いたいかというと、くしゃみは生体を防御するために、非常に広範囲の知覚神経、多くの脳幹の神経核、6本の脳神経(脳神経12本の半分!)、多くの呼吸筋、顔面筋、舌筋、横隔膜などを総動員させて、体の半分近くを使って、すごい作業を行なっています!ということなのです。
それも一瞬のうちに。

ちなみに、くしゃみの風速は、以前は時速320Km=新幹線くらいと報告されていましたが、現在のハイビジョンカメラを使用した実験では、秒速4.5-7m、時速16-25Km が、正確な値のようです。

くしゃみの原因

くしゃみの原因は、さまざまです。

①小さなゴミやほこりなどの刺激物質、
②感冒やウィルスによる急性鼻炎、
③アレルギー性鼻炎や花粉症によるもの、
④春先や秋口の気温の温度差が激しいときの自律神経のアンバランス、
⑤朝のモーニングアタック、
などです。

くしゃみの刺激物質は、花粉、胡椒などの粉末、ミントなどの香料、キシロール、ベンゾール、エーテル、ピリジン、酢酸、アンモニア、カプサイシン(唐辛子に含まれる成分)、ホルマリンなどの化学物質、クロロフォルムなどの麻酔薬があります。
くしゃみは、紙縒りなどの物理的刺激、寒冷刺激、光刺激、顔面の皮膚刺激、結膜刺激などでも誘発されます。
これらのうち、①-④は、前述の仕組みで、くしゃみを起こします。
③のアレルギー性鼻炎によるくしゃみは、鼻粘膜におけるアレルゲンの暴露が、肥満細胞からのヒスタミンやロイコトリエンの分泌放出を促し、ヒスタミンが、三叉神経知覚受容体を刺激して、前項に書いた①-④のくしゃみの起こる仕組みに入っていきます。
⑤のモーニングアタックは、早朝の副交感神経から交感神経への切り替えが、朝起床時にすぐに切り替わらないことによって起こります。
その他に、タバコの煙や過度の鼻かみ、鼻粘膜の乾燥なども誘因になることがあります。

診断と治療は?

くしゃみの原因によります。

アレルギー性鼻炎ならば、アレルギー性鼻炎の診断と治療を行います。風邪やウィルスによる急性鼻炎なら、風邪やウィルス性上気道炎の治療を行います。風邪やウィルスによる急性鼻炎のくしゃみは、1週間ほどでよくなります。2週間以上続くくしゃみは、アレルギー性鼻炎を疑ったほうが良いでしょう。
くしゃみ刺激物質によるくしゃみなら、とくに治療は必要ありません。刺激を避けることが治療になります。異物によるくしゃみも同様です。生体の防御反応の1つです。モーニングアタックも同様に、自律神経の切り替えが原因ですので、治療は必要ありません。モーニングアタックは、人種差が報告されており、日本人で25%、黒人で0%です。
アレルギー性鼻炎によるくしゃみか、血管運動性鼻炎などの自律神経のアンバランスによるくしゃみかを簡単に診断するには、鼻内視鏡による鼻粘膜の色調の変化や水様性鼻漏の性状の観察、鼻汁好酸球検査によって好酸球染色の有無を調べることで容易に判断できます。

いずれの原因であっても、くしゃみ発作には、抗ヒスタミン薬などの抗アレルギー薬が非常に効果があります。抗ヒスタミン薬、抗ロイコトリエン薬、鼻噴霧ステロイド薬(点鼻スプレー)も同様です。抗ヒスタミン薬は即効性があります。鼻噴霧ステロイド薬はつよい抗炎症効果によってくしゃみ発作を強力に抑制します。
一般に、くしゃみの予防には抗ロイコトリエン薬や鼻噴霧ステロイドが効果があり、すでに発症したくしゃみ発作には、抗ヒスタミン薬が優れていると報告されています。
これは、アレルギー性鼻炎だけでなく、血管運動性鼻炎などの非アレルギー性鼻炎に対しても、一定の効果がある治療です。
一般に、くしゃみだけの鼻症状は少なく、ほとんどの場合は、鼻づまりや、水様性鼻漏をともない、風邪のときは、熱発や咽頭痛、咳などを合併しています。これらを総合して判断することが重要です。

くしゃみが出たら…

古来、英語圏では、くしゃみをすると周囲の人から、God bless you と言われます。これは、くしゃみは、忌避すべきペストの初期症状との言い伝えがあったからです。
現代では、くしゃみが連発したら、かかりつけ医の耳鼻咽喉科ですね。

つらいくしゃみ発作 (イメージ)