耳の病気

中耳炎

小児に多い急性中耳炎は抗菌薬治療、鼓膜切開治療で治癒します。反復する中耳炎も多くありますので継続的なフォローが必要です。小児の滲出性中耳炎は難治例、反復例が多いため定期的な観察を必要とします。難治例には鼓膜チューブ留置術などの手術治療を行います。
成人の難治性の滲出性中耳炎では、ANCA関連中耳炎の可能性があり、全身疾患の特殊型として内科的検索とともにCT、血液検査などで総合的に診断します。

成人の慢性中耳炎は難聴と鼓膜の穿孔をともない、多くの場合鼓膜を閉鎖する治療が必要です。穿孔が大きいと手術治療を選択します。(鼓膜形成手術
真珠腫性中耳炎という特殊な中耳炎は、鼓膜の皮膚が中耳に進展して真珠腫とよばれる塊になり、増大して骨破壊を起こします。
手術治療が第一選択となります。(鼓室形成手術

突発性難聴

ある日突然、片方の原因不明の難聴が起こる内耳の病気です。
1年間に全国で3万人が罹患すると報告されています。難聴が起こってから2週間以内に治療を開始すると回復がみられることが多く、発症から4週間後には治療しても聴力の回復はほぼ困難です。治療方法はステロイド治療が中心ですが、いかに早く治療を開始するかが回復には最も重要です。高度難聴例では早期に治療介入しても回復がみられないことがあります。聴神経腫瘍という病気が隠れていることもあります。いずれにせよ突発性難聴の疑いがあれば一刻も早い耳鼻咽喉科専門医受診と早期の診断・治療が非常に重要です。
治療はステロイド薬の内服または点滴治療です。約1/3の症例は十分な治療を行っても回復がみられないとの統計がでています。

メニエル病

片方の耳閉感、耳鳴り、めまい、難聴を起こします。症状は多彩ですが、すべての症状がそろわないこともあります。1/3は両側性に起こります。女性に多くストレスや睡眠不足で悪化し再発を繰り返します。主としてイソバイドという薬を内服して治療します。特徴的な低音域の聴力低下より聴力検査で診断可能な症例が多くあります。一方、診断に時間を要する症例もありイソバイド内服による治療的診断が効果的なこともあります。
慢性例や重症例では、イソバイドが効きにくくすぐに再発します。長期にわたると聴力が低下して難聴が進行します。難治例には内リンパ嚢手術が奏功することがあります。

頭位性めまい

三半規管の中を浮遊耳石が移動して起こる回転性めまいです。
症状は急激ですが回転性のめまいは20秒くらいで自然に治まり、寝たり起きたりや寝返りをうつとき頭位の変換で回転性めまいを繰り返します。自然治癒することもありますが、改善しないときは外来でエプレイ法というめまいの体操を行います。

外リンパ瘻(ろう)

重量物運搬や努責(いきみ)、ダイビングや飛行機での急激な気圧の変化、つよい鼻かみなどでも起こる内耳の液漏れです。回転性浮動性のめまいと難聴が起こります。交通外傷などで頭部につよい打撃や振動が加わった場合にも起こります。
直後から起こる場合と数日してから起こる場合があります。一般にフラフラするめまいが数週間、数ヶ月、ときに数年間続きます。めまいは浮動性回転性どちらもありますが、多くの場合、良くなったり悪くなったりしながら時間がたってもなかなか完全に治りません。いったん自然に治っても再発することがあります。MRIで脳の疾患や腫瘍を除外する必要があります。外リンパ瘻が疑われた場合は、まず自然経過を観察しますが、抗めまい薬が効きにくくめまいが続くとき、めまいを何度も繰り返すとき、他に疾患が見当たらず長期にわたってめまい症状が続く場合、もしくは急激な聴力低下が起こっているときは、内耳の液漏れを止める手術が必要です。(内耳窓閉鎖術

顔面神経麻痺

ヘルペスウィルスが原因で発症する片側の表情筋麻痺です。ベル麻痺とハント麻痺に分類されます。
ある日突然、片方の顔の筋肉が動かなくなり、目が閉じにくくなり食べものや飲み物が口からこぼれたりします。発症前に耳の痛みや違和感が多くあります。
炎症によって浮腫を起こした顔面神経が側頭骨の狭い神経管(骨のトンネル)の中で絞扼されて血流障害を起こすことが病態の本質です。

血流が途絶すると顔面神経に酸素や糖分が供給されず、神経の浮腫がさらに進行してますます絞扼がつよくなるという悪循環が起こることで顔面神経麻痺が進行していきます。
麻痺の程度が軽いとステロイドの内服治療で改善します。帯状疱疹ウィルスによるハント麻痺で表情筋スコアの点数の低い高度麻痺では、抗ウィルス薬や大量のステロイドの点滴治療でも回復しない場合があり、顔面神経のそれ以上の変性壊死を防ぐために早期に顔面神経減荷術を行う必要があります。いずれにせよ麻痺の後遺症を残さないために、早期の診断と治療開始が重要です。

正確な診断が正しい治療の基本です

耳の疾患を正確に診断するために、当院では、初診時の患者さんの症状や経過にあわせて、必要な検査を選択して実施しています。

当院で行っている耳の検査

  • 顕微鏡観察
  • 耳内視鏡検査
  • 純音聴力検査
  • 語音聴力検査
  • 耳鳴検査
    • ピッチマッチ検査
    • ラウドネスバランス検査
    • 耳鳴遮蔽検査
  • ティンパノメトリー
  • 耳小骨筋反射
  • 頭位・頭位変換眼振検査
  • 側頭骨CT(被曝量の少ないコーンビームCT)
  • 血液検査(ANCA関連中耳炎、乳突洞炎)
  • シルマー検査(顔面神経麻痺)