鼻の手術

アレルギー性鼻炎の手術―後鼻神経切断術(ヴィディアン神経切断術)―

慢性の鼻づまり・鼻水などで、飲み薬や点鼻薬が効かない、また効きにくいことがあります。これは、鼻の中の下鼻甲介という粘膜が腫れて鼻腔を塞いでしまい、空気が通らなくなっている状態です。原因の多くは重症のアレルギー性鼻炎です。
このように慢性の鼻づまりで悩んでいる重症のアレルギー性鼻炎の患者さんには、鼻の奥にあるアレルギーの神経を内視鏡でブロックして、慢性の鼻づまり、鼻水をほぼ消失させてしまう手術方法があります。

後鼻神経切断術(ヴィディアン神経切除術)といわれる手術です。
鼻の穴から内視鏡を入れて、鼻の粘膜に7-10 mmの切開を加え、このポケットから4mmの内視鏡を挿入して鼻腔の奥にあるアレルギーの神経を切除する方法です。この神経を切除することで過剰なアレルギー性鼻炎が起こらなくなり、鼻づまりや鼻水が劇的に改善します。どこかを動かす神経や何かを感じる神経ではありませんのでこの神経を切除しても鼻炎以外何も影響はありません。重症の血管運動性鼻炎という自律神経が原因の鼻炎にも効果的です。

7-10 mmの小さな切開で行うため、出血は約10ccと非常に低侵襲で片方30分くらいの手術です。手術は全身麻酔で痛みはありません。1泊入院で行います。

当院では、4000例以上行っています。
鼻づまりはほぼ100%改善します。鼻水は80%以上改善します。

副鼻腔炎(ちくのう症)の手術

鼻づまりとともに粘っこい黄色い鼻水がたくさん出たり、頭痛や鼻水がのどへ流れてくる後鼻漏を起こすのが慢性の副鼻腔炎(ちくのう症)です。
感染やアレルギー性鼻炎によって副鼻腔という空間に膿がたまって出てこない状態です。頭痛はおでこの痛み、眼の周囲や奥の痛み、頬の部分の痛みや重い感じなどの症状があり、この他に嗅覚がなくなったり鈍くなる症状があります。副鼻腔炎による頭痛を偏頭痛と思って長く放置している方もいます。繰り返すことが多く、重症化すると鼻の中に鼻茸(はなたけ)といわれる良性のポリープができてしまいます。

このような副鼻腔炎はポリープを切除する手術が必要です。
ESS(内視鏡下副鼻腔手術)といわれる手術です。
鼻の穴から内視鏡を入れて、ポリープを切除し、副鼻腔を開放して膿を除去する手術です。手術範囲によってⅠ-Ⅳ型に分類されています。
粘膜を傷つけずにポリープと膿だけを除去するために皮膚を傷つけずにカットするひげ剃り用のシェーバーと似た構造のマイクロデブリッダーと呼ばれる手術用シェーバーを使用します。出血が少なくきれいな手術が可能ですが、全副鼻腔炎(Ⅳ型)で片方40分、両側で1時間20分くらいです。多くは鼻中隔の手術と合わせて行います。全身麻酔、1泊入院です。

鼻中隔わん曲症の手術

鼻中隔とは、鼻の中で左右の鼻を分けている軟骨と骨の仕切り板のことです。この仕切り板がどちらかに大きく曲がっていると、曲がっている方の鼻腔の空間が非常に狭くなってしまうため、片方の慢性の鼻づまりが起こります。これを鼻中隔わん曲症といいます。
高度の鼻中隔わん曲症があると睡眠時無呼吸症候群を起こしやすいと言われています。
少しの曲がりであれば構いませんが、骨の曲がりが大きくいつも鼻がつまっていると鼻づまりを改善するために手術が必要です。
鼻中隔矯正術といわれる手術です。
鼻の中に10-15mm の切開を加えて粘膜を一部剥離し、前方の軟骨を保存して後方の骨の曲がりを中心に曲がっている部分だけを切り取ります。軟骨の曲がりがあるときは軟骨の一部も切除しますが、多くの部分は保存します。
先端の軟骨や鼻背(鼻すじの部分)には触れませんので、鼻の形が変わったり、鼻が低くなったりすることはありませんが、手術後は軟骨と骨が固まるまで数日間鼻の中にガーゼをいれて圧迫しておく必要があります。15-20分の手術です。

下鼻甲介の手術

粘膜下下鼻甲介骨切除術といいます。
鼻の中で大きなボリュームを有している粘膜部分を下鼻甲介といいます。下鼻甲介が大きく肥大すると、慢性の鼻づまりが起こってきます。このようなときは下鼻甲介の手術を行います。下鼻甲介の前端の粘膜に10mmの切開をして、その粘膜ポケットから内視鏡を中に入れ、下鼻甲介の中心にあるカリントウに似た形の薄い棒状の骨を切除します。イメージとしては魚の骨抜きに近い感じです。袋状の粘膜を保存して骨の切除が終わったら粘膜の先端を1針縫合します。片方20分くらいの手術です。鼻づまりは劇的に改善します。

Draf Ⅲ 手術

難治性前頭洞炎に対する手術です。
拡大前頭洞手術と言われています。ESS Ⅴ型に分類されます。
再発しやすい副鼻腔炎で前頭洞という骨の空間が狭くて閉塞しやすい症例に対して行う手術です。多くは再手術であり好酸球性副鼻腔炎といわれる病態をともなっています。
通常のESSで前頭洞を開放してもすぐに閉塞してしまうため、より大きな空間を作成します。鼻の中から前頭洞の周りの骨の一部をダイアモンドバーでソフトに削ります。左右の前頭洞の底部と隔壁(仕切りの骨板)を取り去り、2個の前頭洞を1つの大きな空間にしたら手術を終了します。鼻の中から内視鏡で行いますが、骨を削る時間を要するため少し侵襲が大きくなります。手術は全身麻酔、1泊入院で行います。

当院で行っている鼻の手術

  • 重症アレルギー性鼻炎に対する後鼻神経切断術
  • 重症血管運動性鼻炎に対する後鼻神経切断術
  • 鼻中隔わん曲症に対する鼻中隔矯正術
  • 下鼻甲介肥大に対する粘膜下下鼻甲介骨切除術
  • 慢性副鼻腔炎に対する内視鏡下副鼻腔手術(ESS)Ⅰ型-Ⅳ型
  • 好酸球性副鼻腔炎に対する内視鏡下副鼻腔手術(ESS)Ⅰ-Ⅳ型
  • 難治性前頭洞炎に対するDrafⅢ(拡大前頭洞)手術 ESS Ⅴ型
  • 上顎洞炎に対するEMMM(endoscopic modified medial maxillectomy)
  • 鼻涙管閉塞症に対する涙嚢鼻腔吻合術
  • 眼窩吹き抜け骨折(ブローアウト骨折)に対する眼窩吹き抜け骨折整復術
  • 上顎骨折に対する上顎骨折整復術
  • 鼻骨骨折に対する鼻骨骨折観血的整復術
  • 髄液漏に対する髄液漏閉鎖術
  • 鼻副鼻腔良性腫瘍に対する鼻副鼻腔良性腫瘍摘出術