鼻茸(はなたけ)って何?

2019年11月に有名なお笑い芸人のOさんが、TBSの医療番組に出演された際、10年間悩まされ続けている鼻づまりの原因が「鼻茸(はなたけ)」と判明し、手術を決意する様子が放送されたようです。※私はテレビは見ていないのですが、記事を読みました。Oさんは、その後2020年6月に副鼻腔炎の手術を受けられました。手術後のようすをSNS等で報告され話題になったようです。

「鼻茸」と聞くとキノコみたいな感じがしますが、正式名称は「鼻ポリープ」と言います。鼻の中にできている様がキノコのように見えることから「鼻茸(はなたけ)」と呼ばれています。

今回は、最近お問い合わせの多い「鼻茸」について少しお話してみたいと思います。

▼鼻茸って何ですか?どんな症状ですか?

「鼻茸」は、鼻の奥の「副鼻腔(ふくびくう)」という骨で囲まれた空間の粘膜が腫れて垂れ下がりキノコのようになっている状態をいいます。1個だけのこともあれば、複数できている場合もあります。多くの場合、慢性副鼻腔炎に合併してできます。

鼻茸は慢性副鼻腔炎の約10-20%の方にできていると言われています。慢性副鼻腔炎の患者さんは全国に約100-200万人いますので、鼻茸を持つ人は、全国に推定で20万人くらいいる計算になります。

主な症状は、「鼻づまり」や「匂いを感じづらくなる」ことです。
ひどくなると、頑固な鼻づまりに加え、匂いも全くしなくなり、「眠れない・集中できない・ご飯の味がわからない」など日常生活に支障が出てきます。

さらに、粘ちょうな鼻水が絶え間なくのどに流れてきたり(後鼻漏=こうびろう)、おでこや頬、眼の周囲などの顔面に痛みがあったりします。

▼鼻茸ができてるかすぐにわかりますか?

診断は簡単です。鼻の中を見てすぐに診断できます。
鼻鏡という鼻の中を覗く器械や、鼻の中を見るファイバースコープ(内視鏡)で直接観察できます。さらにCTを撮影することで、鼻茸に合併して左右の副鼻腔にどの程度の副鼻腔炎が存在するかを正確に診断することができます。したがって、鼻茸は受診当日に診断でき、治療方針も決定されます。

▼薬で治りますか?

症状に合わせた薬の治療を行います。

クラリス錠というマクロライド系の抗菌薬を3か月ほど内服すると、副鼻腔炎は改善して鼻茸はやや縮小します。喘息をお持ちの場合は、喘息と合併してできる鼻茸の可能性があります。これは、好酸球性副鼻腔炎(→当HPで詳しく説明しています)といって難治性の副鼻腔炎のため、アレルギー反応を抑える抗ロイコトリエン薬を長期間内服します。ステロイドの内服薬や点鼻薬を使うこともあります。好酸球性副鼻腔炎にはクラリス錠は効果がありません。

副鼻腔炎は、重症度に応じた薬の治療が可能です。けれども、鼻の中に鼻茸が観察される場合は、残念ながらほとんどの場合、手術をしないと症状は大きく改善されません。

▼どんな手術をするのですか?

現在では、体に負担の少ない内視鏡手術(ESS)が行われます。

鼻茸の手術は、内視鏡を鼻の中に入れて行います。
内視鏡の画像をモニターで見ながら、「マイクロデブリッダー」と呼ばれる特殊な器械で鼻茸の粘膜を吸引しながら切除していきます。
この「マイクロデブリッダー」は、「鼻茸以外の鼻腔の中の柔らかい組織を傷つけない仕組み」になっています。
例えれば、電気シェーバーで皮膚を傷つけずにヒゲを剃るようなイメージです。

手術は局所麻酔でも可能ですが、痛みや恐怖心がないように、最近では多くの施設で全身麻酔で行われます。

手術は通常、日帰りまたは1泊入院で行われます。
施設によっては1-2週間入院するところもあります。
出血は少量ですが、手術直後は鼻にガーゼや綿などを詰めますので十分に鼻呼吸ができず口呼吸になります。そのため、遠方にお住まいの患者さんや体力のない高齢者、不安の強い患者さんや子どもさんは、手術当日は入院したほうが良いかもしれません。

当院では日帰り手術も行いますが、通常は1泊入院で手術を行っています。

▼費用はどのくらいかかりますか?

手術は全て保険適応ですが、費用は手術を受ける患者さんの健康保険の負担額により異なります。また、同時にいくつかの手術を組み合わせて行うことも多いので、この場合も負担額は違ってきます。

最近では高額医療費の申請によって、医療費をかなり安くできる制度ができていますので、高額医療の適応にあたる場合は申請しておくと安心です。
いずれにしましても、費用等は事前に確認・相談できますのでお尋ねください。

▼最後に

鼻茸に限らず、鼻の病気に悩まされている人は意外に多く、また、自分で鼻の中がどうなっているのか見えないため、不安になって受診する方も多いようです。

現在は、CTや内視鏡などでその場で簡単に副鼻腔炎や鼻茸の診断ができますし、重症度に応じた薬の治療が可能です。鼻茸の中には、治りにくく厚労省の難病指定になっている副鼻腔炎もありますので注意が必要です。また、薬で治らない鼻茸には体に負担の少ない内視鏡手術があります。

当院は、1万8,000例以上の鼻副鼻腔手術の実績があります。

つらい鼻づまりにお悩みの場合は、一度ご相談ください。

院長 定永正之

定永正之(さだながまさゆき)
耳鼻咽喉科医師・耳鼻咽喉科専門医

先代から50年、宮崎県宮崎市で耳鼻咽喉科診療所を開業。一般外来診療から手術治療まで幅広く耳鼻咽喉科疾患に対応しています。1990年宮崎医科大学卒。「治す治療」をコンセプトに日々患者様と向き合っています。土曜日の午後も18時まで外来診療を行っていますので、急患にも対応可能です。
https://www.sadanaga.jp/

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