副鼻腔真菌症 -その1-

今回は、外来診療の鼻疾患で、しばしば遭遇する、副鼻腔真菌症について書きます。

真菌症とは?

カビのことです。
副鼻腔真菌症は、急性と慢性、浸潤性(しんじゅんせい)と非浸潤性に分けられます。
ほとんどは、慢性非浸潤性で、ふつう、副鼻腔真菌症というと、これを指します。
浸潤性と非浸潤性を、破壊型と寄生型と呼ぶ分類もあります。
浸潤性(破壊型)は、特殊な疾患です。また別の機会に述べます。

病態は?

40歳以上の中高年に多く、女性に多い傾向があります。真菌が寄生する部位は、左右4つずつある副鼻腔のうち、上顎洞が最多です。2番目が篩骨洞。ほとんどは片方だけです。
真菌は、副鼻腔に寄生菌として存在し、真菌塊を作ります。組織に浸潤することなく、おとなしくしています。

真菌の起炎菌は、Aspergillus, Mucor, Candida です。
読み方は、アスペルギルス、ムコール、カンジダです。
Aspergillusが最多です。

真菌症は、免疫不全の人だけでなく、健常人にも起こります。

症状は?

膿性鼻漏、頬部痛、頭重感を伴うことが多いが、無症状のこともあります。鼻漏は変な匂いがすることもあります。長期間無症状で、CT撮影や脳のMRI検査のときに指摘され、耳鼻科受診を勧められることも、しばしばのようです。

診断は?

糖尿病や透析治療中、免疫不全の病気があると、真菌が寄生しやすい環境になります。また、元気な方でも、慢性副鼻腔炎が長期間に及ぶと副鼻腔炎の一部に真菌塊を生じることがあります。

CTで副鼻腔炎陰影(上顎洞、篩骨洞)の中に、境界不明瞭な白い石灰化陰影が見られます。副鼻腔炎所見を伴うことが多く、真菌塊は、白色部分だけではなく周囲までに及んでいることが多くあります。真菌症の期間が長いと、上顎洞の骨が肥厚して不明瞭な硬化像を見せることもあります。

非浸潤性の真菌症では、血液検査でβ-Dグルカンという物質を調べることが、浸潤性でないことの診断につながりますので、重要です。
AFRS(アレルギー性真菌性副鼻腔炎)という、特殊な真菌症との鑑別診断も重要です。

鑑別診断として、悪性腫瘍との鑑別は絶対です。

治療は?

真菌症の治療は、基本的に手術によります。
ESS(内視鏡下副鼻腔手術)によって、主として上顎洞に寄生する真菌塊を除去します。真菌塊は、緑色がかった半乾燥の固形物として上顎洞に存在することが多く、上顎洞粘膜に強固に付着して容易に剥がれないこともあります。真菌塊は、干からびたチーズのようなものですので、内服薬による薬物治療では、排出を促すことはできません。ESSで、上顎洞内の真菌塊を完全に除去、清掃して手術は終了です。他に副鼻腔炎があれば同時に手術を行います。

手術後は、通常の副鼻腔炎と同じです。とくに抗菌薬の制限や抗真菌薬の投与は必要ありません。

通常は、再発もなく、予後は良好です。

真菌症だったら?

副鼻腔炎があり、副鼻腔炎の治療が必要であれば、ESSによる手術を選択します。
他の部位の副鼻腔炎がほとんどなく、真菌症だけである場合には、副鼻腔炎症状があれば、手術を勧めます。
症状が全くない真菌症は、本人がそのままにしたいと思われることもしばしばです。ただし、この場合は、将来、高齢や他の全身的な病気、免疫力低下になったとき、非浸潤性が浸潤性(=破壊型)に移行して、周囲の脳や眼球を破壊して感染症が広がり、重大な結果につながることを理解しておく必要があります。

一言で言えば、真菌症が見つかったら、元気なうちに、手術によって完治させておくことが望ましいと思われます。
体力が落ちて、真菌が暴れ出す前に。

チーズに付着したカビ(真菌)
(イメージです)