黄色い鼻水 -かぜ?アレルギー?副鼻腔炎?- -鼻水の色でわかること-

鼻の調子が悪いときは、黄色い鼻水が出ますね。鼻だけでなく、風邪を引いたときや体調が良くない時には、黄色い鼻水が出ることがあります。
小さな子どもさんも、よく鼻水を垂らしています。ときどき鼻水が黄色くなると、お母さんは心配されて耳鼻咽喉科へ連れて来られます。
でも一体どんな時に黄色い鼻水がでるのでしょう。鼻水はどうして黄色くなるのでしょう。知っていますか?
今回は、黄色い鼻水の話です。

鼻水の色

アレルギー性鼻炎がある方は、鼻水がたくさん出ます。よく鼻かみをしていますね。
大抵は透明で水っぽい鼻水ですが、風邪をひくと色がつきます。鼻水が黄色くなると要注意です。ちくのう症(副鼻腔炎)を起こしているからです。
では、なぜ鼻水に色がつくのでしょう。
透明な鼻水は、アレルギー性鼻炎のことがほとんどです。感冒の初期の急性鼻炎でも見られます。それは元来、鼻水は無色透明だからです。黄色い鼻水は、感染を起こしているから黄色くなっているのです。では何故、感染を起こすと黄色くなるのでしょうか。

急性鼻炎の鼻水

急性鼻炎は90%以上がウイルス性と言われますが、ウイルス感染によって急性鼻炎が長く続くと、多くは鼻づまりから細菌感染を併発してウイルスと細菌の混合感染が起こります。

ウイルス性上気道炎(感冒)によって、鼻粘膜にウイルス感染が起きると、産生されたサイトカインやケモカインによって、鼻粘膜にある肥満細胞からヒスタミンが遊離されます。ヒスタミンによる鼻粘膜の三叉神経刺激が、多量の鼻汁分泌を起こします。
そのため鼻水が大量に出てきます。
(はなみず) 
これが急性鼻炎の正体です。 
急性鼻炎は、ウイルス感染後、即時に起こります。

同時に、鼻粘膜で起こったウイルスの局所感染で多くのサイトカインが産生され、体内の免疫機構を司る好中球(白血球の1種)とマクロファージが遊走してきます。好中球はやマクロファージは貪食(どんしょく)機能があり、ウイルスや細菌に取りついて細胞内に飲み込んでしまいます。
( アレルギーと免疫 -その2- )
このとき、好中球やマクロファージの細胞内で活性酸素が生成され、主として好中球のアズール顆粒に蓄えられているミエロペルオキシダーゼの触媒反応によって次亜塩素酸が作られます。
次亜塩素酸は細胞毒性があるため、これが好中球に取り込まれた細菌やウイルスを 破壊するのに役立つ仕組みになっています。(次亜塩素酸は消毒薬の成分です。聞いたことがありますね。)

ミエロペルオキシダーゼは、緑色成分のヘム色素(ヘムグリーン色素)を持っていますので、好中球が殺菌後に死滅するとミエロペルオキシダーゼの緑色素で膿が緑色に近くなります。
これは、集まってきた好中球の細胞が反応して起こる現象ですから、ウイルス感染からすこし時間が経ってから起こります。

ミエロペルオキシダーゼ (MPO)
( wikipedia より転載 )
ミエロペルオキシダーゼは好中球に
最も豊富に存在するタンパク質で、
心血管リスクとの関連も指摘されている



風邪のとき、初めはサラサラの水っぽい鼻水がでて、しばらくすると(好中球やマクロファージが働いた後)、黄色や緑っぽい鼻水になってくるのは、このためです。
急性鼻炎の治癒過程で一過性に黄色や緑っぽい色の鼻水が出るのは、こういった理由ですので、とくに心配することではありません。

副鼻腔炎の鼻水

もう1つ、黄色い鼻水の原因は、急性鼻炎に続発して、副鼻腔炎が起こることで見られます。
ウイルス性の急性鼻炎が続くと、鼻粘膜は炎症によって腫れ、鼻づまりが起こります。鼻づまりが長く続くと、鼻腔内で細菌感染を併発して、急性副鼻腔炎を起こします。

急性副鼻腔炎が起こると、副鼻腔の粘液に膿(うみ)が混じって副鼻腔の空間に貯まります。
膿は、感染を起こした細菌、白血球(好中球)に取り込まれて死滅した細菌、大量の壊れた白血球などが入り混じった液です。ですから膿の中には、細菌がたくさん増殖しています。増殖した一部の細菌からは有害な外毒素(exotoxin)が分泌されます。このため、膿の中には、細菌から放出される外毒素も含まれています。
大量に増殖した細菌、大量に死滅した細菌、細菌を取り込んで死滅した大量の白血球、細菌が出す外毒素。これら全部を含んだものが副鼻腔炎の膿なのです。ですから、副鼻腔炎の膿は、ドロっとして臭いがあります。
副鼻腔炎の膿は、やはり黄色や緑っぽい色がついています。でもこのときの緑色は、ウイルス感染のときとは少し違います。
膿は細菌を多く含むため、膿の色は細菌の状態を反映します。

例えば、緑膿菌では文字通り緑色になります。緑膿菌は化膿すると青緑色の色素(ピオシアニン)や黄緑色の色素(ビオペルジン)を発生するため、膿が青緑色や黄緑色になります。
鼻腔に多く常在する黄色ブドウ球菌では、黄色です。菌がカロチノイド色素の1種、黄色色素 (スタフィロキサンチン staphyloxanthin )を産生するため、黄色っぽい色になります。
肺炎球菌では、鉄錆(さび)色に近い色です。肺炎球菌はα溶血性があり血液を溶かすので、血液中のメトヘモグロビンが溶け出して緑色になります。メトヘモグロビン自体はチョコレートに青みがかった色をしています。溶血した赤血球中に存在するヘモグロビンのヘム鉄の赤色色素と合わさって鉄錆色になるのです。茶褐色になることもあります。

副鼻腔炎の膿は、感染による細菌の色なのです。

副鼻腔炎のときは?

少し難しい話になってしまいました。
今までの話で、黄色い鼻水は風邪のウイルス感染、または副鼻腔炎を起こしたときの色だとわかりました。
ウイルス感染は数日で治りますから、心配いりませんね。問題は副鼻腔炎です。
副鼻腔炎は急性であれば、きちんと治療をすれば治癒します。ですから副鼻腔炎を起こして黄色い鼻水が出ても、遅くならないうちに耳鼻咽喉科で治療すれば、ほとんどの場合、大丈夫です。
もし、あなたが黄色い鼻水が出たときは、すぐにかかりつけの耳鼻咽喉科医に相談してみてください。きちんと治療してくださると思います。

ティッシュに鼻をかむ女性
(イメージです)
ティッシュの色でわかること
(イメージです)

院長 定永正之

定永正之(さだながまさゆき)
耳鼻咽喉科医師・耳鼻咽喉科専門医

先代から50年、宮崎県宮崎市で耳鼻咽喉科診療所を開業。一般外来診療から手術治療まで幅広く耳鼻咽喉科疾患に対応しています。1990年宮崎医科大学卒。「治す治療」をコンセプトに日々患者様と向き合っています。土曜日の午後も18時まで外来診療を行っていますので、急患にも対応可能です。
https://www.sadanaga.jp/

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