アレルギー性鼻炎 -アレルギー性鼻炎の飲み薬は正しいか? あなたにあっているか?-

アレルギー性鼻炎で定期的に耳鼻科に通院されている方は、比較的多いと思います。

アレルギー性鼻炎については、もはや簡単な説明の必要はないように思います。毎年、花粉症の時期になると、テレビのCMでも、「くしゃみ、鼻水、鼻づまり」と謳われているため、これらのつらい3大症状も、みなさん方の中には、ほとんど暗記している方も多いのではないでしょうか。

でも、花粉症などで耳鼻咽喉科に通院されて、お薬をのんでおられる方、本当にその薬で大丈夫ですか?

今回は、アレルギー性鼻炎の薬について書きます。

有病率

全国のアレルギー性鼻炎の有病率は49%。ハウスダストなどの通年性鼻炎で25%、スギ花粉症で39%であり、とくにスギ花粉症の増加が著しいことが報告されています。アレルギー性鼻炎の有病率は、すでに50%を超えようとしています。

医学界の常識から考えると、単一の疾患で、有病率が50%、国民の2人に1人が罹患している、などという数値は、もはやとんでもないレベルです。

内科疾患として有名な糖尿病は12%、国民の9人に1人。予備軍まで入れると推定2000万人で16%、6人に1人です。

高血圧は受療者数2700万人で22%、国民の5人に1人の計算です。未治療の高血圧まで推定しても4300万人、国民の3人に1人です。

これから考えると、花粉症の有病率50%が、かなり高い数値であることが理解できると思います。

日本の総人口が1億2450万人(2023年)ですので、単純に計算すると、アレルギー性鼻炎の49%は、6100万人。花粉症の39%は、4800万人以上が罹患していることがわかります。高血圧同様に、未治療の患者さんや医療機関を受診しない患者さん、薬局で鼻炎薬を購入している患者さん、さらにはインターネットなどで定期的に薬を購入している患者さんまで含めると、さらに高い有病率が予想されます。

2023年4月3日、内閣の岸田総理大臣は参議院決算委員会で、「花粉症はもはやわが国の社会問題。」と述べられました。

これはすなわち、花粉症(アレルギー性鼻炎)は国民病であるとの考えを首相として公の場で発言され、国民に治療の必要性を訴えられたという点において、ある意味異常な事態であると言えると思います。

一国の首相をもってして、国会などの公の場で社会問題とまで言わしめた、花粉症。

そうであれば、その疾患の治療については当然ながら、真剣に取り組まなければなりません。

アレルギー性鼻炎の話題

アレルギー性鼻炎については、以前にもいくつか書いてきました。

基礎医学の知識、アレルギーや免疫応答について、黄砂、花粉症について、免疫学の話題、舌下免疫療法、レーザー治療、手術治療、など。

アレルギー性鼻炎は、あまりに範囲が広い疾患であるため、一度に全部を俯瞰(ふかん)することは到底不可能でした。そのため、何度にも分けて説明してきたつもりです。

しかしながら、皆さんがいちばん知りたいと思ってきたことがすこし足りなかったのではないか、と思います。

それは、アレルギー性鼻炎のお薬の治療です。耳鼻咽喉科の外来診療でじつは最も多いか、2番目に多い処方が、アレルギー性鼻炎の薬なのです。

今回は、アレルギー性鼻炎の飲み薬、いわゆる内服治療について、徹底的に説明したいと考えています。

アレルギー性鼻炎の薬

もしあなたが、現在、お近くの耳鼻咽喉科へ通院されていて、飲み薬を処方されているならば、その薬を目の前に出してみてください。

あなたは、その薬の特徴を言えますか?

その薬は、どんなタイプの薬で、あなたの鼻炎のどこに作用して、いったいどんな働きをしてくれるのか? もちろん簡単にで良いです。

“そんなこと、わかるはずないじゃないか。そんなのは、医者の仕事だろ!”

そんな声が聞こえてきそうです。

確かにあなたのおっしゃる通りです。

でも、よく考えてください。あなたは、今日これから、スーパーに行きますか? 昨日、スーパーに行きましたか? そこで食材を買いましたか? 何を買いましたか? お肉、お魚、野菜、お惣菜も。牛乳やヨーグルト、果物も買われたかもしれません。

それは、あなたとご家族全員で、今晩食べるものではないのですか?

あなたは、スーパーでお肉やお魚や、野菜を買ったとき、自分の目で見て、手にとって確かめて、新鮮さを判断され、賞味期限を見て安全性を確認して、美味しさや食べやすさをよく考えた上で、レジに持っていかれたのではないですか?

もし、あなたが手に取った野菜やお肉が万一、あまり好みでないと思ったり、賞味期限が近かったりしたら、あなたは恐らく迷いなくその食材を棚に戻したはずです。

どうしてでしょうか。それは当然です。

あなたの体の中に直接入るものだから、ですね。

もう、お分かりと思います。

お薬も同じなのです。

目の前のお薬について何も知らないのに、病院やクリニックでもらったお薬は、無条件に飲む。

あなたが、かかりつけの医師を100%信用してその薬を飲むのなら、それでも構いませんが、自分や家族が食べる食材にはとても気を使うのに、お薬については全く気にもかけない、というのはすこしだけ、違うような気もします。

ものすごく勝手なことをかきましたが、どうかご容赦ください。別にあなたを責めているわけではありません。

要は、病院やクリニックで処方されたお薬も、少しだけ知識をもって飲みましょう!という意味なのです。誤解なさらないように。

フェキソフェナジン

写真1 フェキソフェナジン塩酸塩(60mg)
  「サワイ」  
https://med.sawai.co.jp/preview.php?prodid=1535&prodname=%E3%83%95%E3%82%A7%E3%82%AD%E3%82%BD%E3%83%95%E3%82%A7%E3%83%8A%E3%82%B8%E3%83%B3%E5%A1%A9%E9%85%B8%E5%A1%A9%E9%8C%A060mg%E3%80%8C%E3%82%B5%E3%83%AF%E3%82%A4%E3%80%8D
医薬品添付文書: https://med.sawai.co.jp/file/pr1_1535.pdf

写真1は、アレグラ錠(60mg)の後発品の、フェキソフェナジン塩酸塩(60mg)です。
アレルギー性鼻炎に対して現在、最も多く処方されている薬のひとつです。

副作用としての眠気が非常に少ないのが特徴です。アレグラは、TVのCMでもありますね。薬の名前は聞いたことがある方も多いと思います。

でも、あなたはこの薬について、どれだけご存じですか?

近年、眠気の少ない抗ヒスタミン薬が次々と開発され市販されています。後ほどご紹介していきます。

アレルギー性鼻炎の薬にはタイプがある

その通りです。アレルギー性鼻炎の飲み薬には、いくつかのタイプがあります。

それは、どのタイプの鼻炎に効くとか、重症度を判断して使いましょう、とかではなくて、どちらかと言うと、あなたの鼻の中で鼻炎が起こっているプロセスの、一体どこに作用する薬なのか? と言う1点につきます。

花粉症にしても、ハウスダストにしても、アレルギー性鼻炎の起こり方は、ほぼ決まっています。

アレルゲンが鼻粘膜に付着してから、粘膜下でアレルギー反応が進み、くしゃみ、鼻水、鼻づまりの症状がおこるまでは、ある一定のプロセスを通ります。

このアレルギー反応については、今までにいくつかのトピックスで詳しく書いてきました。ここで詳しく説明すると、本題から外れて長くなりそうです。でも、要点はきちんと理解しておかないと、自分がこれから飲む薬が、いったいどこに効いているのか、全く知らないまま、飲み続けることになってしまいます。

そこで、簡単に復習しようと思います。

アレルギー性鼻炎の起こりかた

アレルギー性鼻炎は、ハウスダストによる通年性の鼻炎でも、スギ花粉によるスギ花粉症でも、アレルギー性鼻炎の起こりかたは同じです。

簡単に説明します。

IgE抗体が作られる

ハウスダストやスギ花粉などの「抗原」が体内に入ってくると、生体はこのタンパク抗原を異物と認識して排除するために、抗原に対して「抗体」を産生します。

図1 免疫グロブリン(抗体)の一般構造
真ん中の2本の長い鎖(chain)が重鎖、左右の短い鎖が軽鎖と呼ばれる。IgD、IgG、IgEはこの構造(単量体)。IgAは2量体、IgMは5量体。
https://ja.m.wikipedia.org/wiki/%E3%82%A2%E3%82%A4%E3%82%BD%E3%82%BF%E3%82%A4%E3%83%97_(%E5%85%8D%E7%96%AB%E5%AD%A6)

抗体は免疫グロブリンと呼ばれ、IgM、IgG、IgA、IgD、IgE の5種類があります。
5種類の抗体の違いは、α, δ, γ, ε, μの5種類の重鎖の違いによります。このうちアレルギー性鼻炎や花粉症で働く免疫グロブリンはIgE です。

図2 IgE 抗体の構造
IgE抗体の上半分をFab 部位(Fab region)、下半分をFc 部位(Fc Region)と呼びます。(左図)
https://en.m.wikipedia.org/wiki/Immunoglobulin_E

IgE抗体は、一般にB細胞から分化した形質細胞によって産生されます。

肥満細胞の細胞膜表面にはIgE抗体が結合するFcεR1がある

肥満細胞の表面にはFcεR1 (Fc イプシロン受容体1) が存在しており、IgE抗体と結合します。

図3 Fc ε 受容体1とIgE抗体の結合
Pathogen(ハウスダスト、スギ花粉などの抗原)
Antibody(IgE抗体)
Fc receptor(Fc ε 受容体1)
https://en.m.wikipedia.org/wiki/Fc_receptor

Fc ε 受容体1(Fc ε R1、図ではFc receptor) が肥満細胞、好塩基球、好酸球などの細胞膜表面に存在します。

このFc ε R1は、IgE抗体(図3 Antibody)のFc 部分と強力に結合します。

花粉抗原(Pathogen)がIgE抗体(Antibody)に結合するとき、直接肥満細胞表面で反応するのではなく、IgE抗体は肥満細胞のFcε受容体との橋渡しをしているのです。

“アレルギー性鼻炎や花粉症を説明する多くのサイトでは、この煩雑な反応系を省略してわかりやすくするために、あたかも肥満細胞表面にIgE抗体が付着して並んでいるようなイラストや図が提示されています。これはあくまで、概ねの理解を優先した省略であって決して間違いではありません。念のために記載しておきます。今回は、アレルギー反応の正確な理解よりも「抗アレルギー薬の作用機序と症状に合わせた薬の選択」を優先事項としていますので、細かな相違点にはあまりこだわらないことにしています。”

抗原と結合した2つのIgE抗体が隣のFcεR1 (Fcε受容体1)との間を架橋する

抗原と結合したIgE抗体が連続した2つのFcεR1を架橋(リンク)することでFcεR1が活性化され、肥満細胞の細胞内反応が進行して脱顆粒(degranulation)が起こります。

図4 隣り合うFcεR1 を抗原と結合したIgE抗体が架橋する(linkage)によって肥満細胞の脱顆粒が進行する

1 抗原 2 IgE 抗体 3 Fcε受容体1(FcεR1)
4 ケミカルメディエイター
(ヒスタミン、プロテアーゼ、ケモカイン、ヘパリン etc.)
(すでに産生されて貯蔵されていた物質)
5 顆粒 6 肥満細胞
7 ケミカルメディエイター
(プロスタグランジン、ロイコトリエン、トロンボキサン、PAF etc.)
(新しく産生される物質)
https://en.m.wikipedia.org/wiki/Fc_receptor

肥満細胞の脱顆粒によって、肥満細胞内に貯蔵されていた大量のヒスタミンが放出されます。

さらに肥満細胞の細胞膜でアラキドン酸カスケード反応が進行して、ロイコトリエン、トロンボキサン、プロスタグランジンなどの物質が産生されます。

図5 好塩基球(イラスト)
肥満細胞(Mast cell)は好塩基球と構造が非常によく似ています。好塩基球も肥満細胞と同様に細胞内顆粒が刺激によって脱顆粒して、ヒスタミン、ロイコトリエン、ヘパリンなどを放出します。
肥満細胞のわかりやすいイラストが見つからないため、代わりに好塩基球を示しています。
https://en.m.wikipedia.org/wiki/Basophil

好塩基球も肥満細胞と同様に、多くの細胞質内顆粒を持っていて、脱顆粒を起こします。

鼻粘膜に放出された大量の化学物質が、神経や血管に作用する

ヒスタミンは、鼻粘膜下の三叉神経終末にあるヒスタミンH1受容体と結合して、その刺激は脳幹に伝えられます。脳幹のくしゃみ中枢からからの神経反射で、くしゃみ発作を起こします。

脳幹の分泌中枢からの刺激が迷走神経を介して、鼻の翼口蓋神経節に伝わり、鼻腺細胞に作用して、大量の鼻水が出てきます。

ロイコトリエン、プロスタグランジンD2、トロンボキサンA2、PAF などの化学物質(ケミカルメディエイター)は、直接、鼻粘膜の血管に作用して、血管を拡張させて血流を増やし、血管の透過性を亢進させて血管内から浸出液が出てきて、鼻粘膜の容積が増大します。
これが、鼻づまりです。

インターロイキンが鼻粘膜に好酸球を集めて、鼻づまりを起こす

Th2リンパ球(2型ヘルパーT細胞)が産生する、IL(インターロイキン)-4、IL-5、IL-13などのサイトカインによって、好酸球を中心とする炎症細胞が鼻粘膜に浸潤します。好酸球が産生するロイコトリエンによって遅発性の鼻粘膜腫脹が起こります。
これが、抗原暴露から数時間後に起こる鼻づまりです。

これが、ハウスダストや花粉症によるアレルギー性鼻炎が起こりときの鼻粘膜での免疫反応です。

“本当はもっと詳しい説明が必要なのですが、今回はお薬の話題ですので、簡単にまとめました。もう少し詳しい説明を聞きたい方は、以下のトピックスをご覧ください。”

花粉症 -その3- 一体どうして起こるのか?

抗ヒスタミン薬 -その1-

花粉症 -その1-

もっと簡単な理解は?

大体、理解できましたね。
すこし難しいのでもっと簡単に説明しましょう。

以下のイラストは、「花粉症のはなし 〜原因とメカニズム〜 アレジオン」 (エスエス製薬) より引用しました。とてもわかりやすいイラストと絵です。https://www.ssp.co.jp/alesion/hayfever/


① ハウスダストやスギ花粉によって、血液中にIgE抗体が作られて、鼻粘膜下にある肥満細胞の表面にくっついています。

② ハウスダストやスギ花粉などの抗原が鼻粘膜に付着すると、粘膜下の肥満細胞(マスト細胞)の表面のIgE抗体と結合します。

③ 抗原がIgE抗体と結合すると、肥満細胞が脱顆粒を起こして、ヒスタミンを放出します。

④ ヒスタミン以外にも、ロイコトリエン、トロンボキサンA2、プロスタグランジンD2、PAFなどの化学物質(ケミカルメディエイター)が、肥満細胞から放出されます。

④ ヒスタミンは、鼻粘膜下の三叉神経終末にあるヒスタミンH1受容体と結合して、その刺激は脳幹に伝えられます。脳幹のくしゃみ中枢からからの神経反射で、くしゃみ発作を起こします。(同上)

脳幹の分泌中枢からの刺激が迷走神経を介して、鼻の翼口蓋神経節に伝わり、鼻腺細胞に作用して、大量の鼻水が出てきます。(同上)

https://www.ssp.co.jp/alesion/hayfever/

⑤ ロイコトリエン、プロスタグランジンD2、トロンボキサンA2、PAF などの化学物質(ケミカルメディエイター)は、直接、鼻粘膜の血管に作用して、血管を拡張させて血流を増やし、血管の透過性を亢進させて血管内から浸出液が出てきて、鼻粘膜の容積が増大します。
これが、鼻づまりです。

図5 鼻粘膜
鼻腔には上方から、上鼻甲介、中鼻甲介、下鼻甲介の3つの粘膜のロールがあります。
この粘膜のロールが腫れて鼻腔内で体積が大きくなるのが、鼻づまりです。
https://en.m.wikipedia.org/wiki/Nose

どこを攻撃する?
ヒスタミン放出の、前と後

お薬は、アレルギー性鼻炎に限らず、体の中で起こる生体反応のどこかを攻撃します。

そして、その反応が悪い方向に行くのをブロックして、良い方向へ向けてあげるのです。

アレルギー性鼻炎の発症は、肥満細胞(マスト細胞)が脱顆粒して細胞の中に蓄えられていたヒスタミンが大量に放出されるのが原因です。(原因1)

さらに、放出されたヒスタミン、ロイコトリエンなどの物質が、周りの受容体に作用するのが原因です。(原因2)

したがって、肥満細胞が脱顆粒しないようにすれば良く(原因1) 、放出されたヒスタミンやロイコトリエンが受容体に結合しないようにすれば良いのです。(原因2)

ここに、お薬が働きます。

肥満細胞が脱顆粒しないようにする薬は、ケミカルメディエイター遊離抑制薬と呼ばれます。

ヒスタミンがヒスタミン受容体に結合しないように邪魔をする薬は、抗ヒスタミン薬と呼ばれます。

あれ、どこかで聞いたことがある薬ですね。そうです。これが「抗ヒスタミン薬」なのです。みなさん、何となく何度も耳にしておられたと思います。

抗ヒスタミン薬は、ヒスタミンがヒスタミンH1受容体に結合しないようにブロックするお薬なのです。

したがって、すでにヒスタミンが大量に放出されて花粉症の症状が起こってしまっているときに、最も有効な薬です。

アレロック

写真2 アレロック錠(5mg)
           協和発酵キリン(株)
https://ja.m.wikipedia.org/wiki/%E3%82%AA%E3%83%AD%E3%83%91%E3%82%BF%E3%82%B8%E3%83%B3
医薬品添付文書: https://image.packageinsert.jp/pdf.php?yjcode=4490025F1023

代表的な抗ヒスタミン薬のアレロック錠。後発品はオロパタジン錠(5mg)です。

抗ヒスタミン薬なのでもちろん、ヒスタミンH1受容体拮抗作用はありますが、アレロック錠はさらにケミカルメディエイター遊離抑制作用も有しているため、アレルギー反応をより強力にブロックします。言わばダブルでブロック効果のある優れた薬です。

同じように、ロイコトリエン、トロンボキサン、プロスタグランジンが受容体に結合するのを邪魔する薬があります。

ロイコトリエンが受容体に結合するのを邪魔するのは、ロイコトリエン受容体拮抗薬です。

プロスタグランジンD2、トロンボキサンA2が受容体に結合するのを邪魔するのは、プロスタグランジンD2・トロンボキサンA2受容体拮抗薬です。これは、2つの受容体ブロックがセットになっています。
この薬は、ラマトロバン(商品名: バイナス錠)といいます。

バイナス

バイナス錠(75mg)。  バイエル薬品
https://pharma-navi.bayer.jp/baynas/basic-docs
医薬品添付文書: https://pharma-navi.bayer.jp/sites/g/files/vrxlpx9646/files/2021-12/BNS_MPI_202112140.pdf

唯一のプロスタグランジンD2・トロンボキサンA2受容体拮抗薬です。後発品はラマトロバン錠(75mg)。

非常に良い薬でしたが需要減少のため、残念ながら現在は販売中止になっています。

症状に合わせて、薬を…

くしゃみ、鼻水、鼻づまり。

花粉症のCMで昔からよく流れていますので、みなさん、耳から覚えてしまった方もおられるのではないでしょうか。

アレルギー性鼻炎、花粉症の3大症状です。

どれもつらい症状なのですが、このうち、くしゃみ、鼻水はおもにヒスタミンが原因になって引き起こされます。

鼻づまりはおもにロイコトリエンが原因になります。

ということは、くしゃみ鼻水がひどい時にはヒスタミンをブロックする薬を、鼻づまりがひどい時にはロイコトリエンをブロックする薬を使えば良いことになりますね。

すなわち、アレルギー性鼻炎の薬は、基本的に症状に合わせた選択が必要なのです。

重要なヒスタミン、ロイコトリエン

図6(図5再) 肥満細胞の脱顆粒(degranulation)
https://en.m.wikipedia.org/wiki/Immunoglobulin_E

再度、図5で見た肥満細胞の脱顆粒です。
アレルギー性鼻炎のつらい3大症状、くしゃみ、鼻水、鼻づまりを起こしてくる化学物質(メディエイター)の中でとくに重要な物質が、肥満細胞から放出されるヒスタミン(4)と生成されるロイコトリエン(7)です。

ヒスタミンがくしゃみ、鼻水を、ロイコトリエンが鼻づまりを起こすことは、すでに書きました。

他のケミカルメディエイター、プロスタグランジン、トロンボキサン、PAFは何をするのでしょうか?

トロンボキサンA2、プロスタグランジンD2は?

トロンボキサンA2は、トロンボキサンA2受容体であるTP受容体に作用します。鼻粘膜の血管平滑筋にあるTP受容体は、トロンボキサンA2結合によって血管透過性の亢進が起こり、血管外に血漿成分が漏出します。その結果、鼻粘膜の体積増大が起こって鼻粘膜が充血して鼻閉=鼻づまりが起こります。

プロスタグランジンD2は、その受容体であるDP受容体に作用して血管拡張を起こします。さらにプロスタグランジンD2のもう1つの受容体であるCRTH2受容体は好酸球や好塩基球の表面にあります。

プロスタグランジンD2は、好酸球や好塩基球にあるCRTH2受容体に作用して好酸球や好塩基球を鼻粘膜のアレルギーが起こっている場所に集めます。(好酸球遊走)

そして好酸球はロイコトリエン産生を増加させ、好塩基球は脱顆粒して、ヒスタミンやロイコトリエンなどのケミカルメディエイターを放出させるという悪循環を形成するのです。

これらのトロンボキサンA2受容体であるTP受容体、プロスタグランジンD2受容体であるDP受容体やCRTH2受容体を同時にブロックするのが先に紹介したラマトロバン(バイナス錠)です。ラマトロバンは気管支喘息に対する効果も確認されています。

* ラマトロバンは非常に良いお薬でしたが、需要と供給の関係から残念ながら、現在では販売停止になっています。 (前述)

PAF?

PAFとは血小板活性化因子(Platelet Activating Factor)の略です。PAFは、もともと止血のための因子です。血管拡張作用と血小板活性化作用があり、局所で血管拡張によって血液を集めて血小板を活性化して機能を高めて止血のために働きます。

一方で、PAFは血小板を活性化する作用だけでなく、アレルギーに関連する重要な物質でもあります。PAFは肥満細胞の脱顆粒によって産生されますが、好酸球からも大量に遊離されます。

PAFは好酸球から大量に遊離されて、好酸球をアレルギーの起こっている鼻粘膜に集める非常に強力な働きを持っています。

好酸球が大量に集まるため、好酸球からのロイコトリエン産生が増加します。さらにPAFのもつ強力な血管拡張作用によって、鼻粘膜の体積増大が起こり、つよい鼻づまりが起こります。PAFは鼻づまりを起こす強力な物質です。

このPAFを標的として、H1受容体の抗ヒスタミン作用とPAF受容体拮抗作用を合わせもった、ルパタジンという薬剤がスペインで開発され、ルパタジンは2017年から国内でもルパフィン錠(商品名)として販売が開始されました。

PAFは以前からアレルギー反応とのつよい関連が示唆されてきた物質であり、すでに1990年代にはアレルギー性鼻炎や喘息との関連が強く知られていました。

PAFによって、好酸球の遊走活性化によるロイコトリエン産生、鼻粘膜の血管拡張、血管透過性亢進による鼻粘膜体積の増大、気管支平滑筋収縮作用による喘息発現や増悪などが起こります。すなわち、PAFは鼻粘膜においては、強力な鼻閉、鼻づまりを起こすのです。

このPAF受容体が同定され、PAF受容体をブロックする薬剤がルパタジンです。ルパタジンの大きな特徴は、H1受容体をブロックする、いわゆる抗ヒスタミン作用をあわせもつことです。

この相乗作用によって、強い鼻づまりに対して、ルパタジンの改善効果が確認されています。

じつは、ルパタジンは内服すると生体内で代謝されてデスロラタジン(商品名デザレックス錠)に変換されます。デスロラタジンは単独で強力な抗ヒスタミン作用を持っていますので、ルパタジン自体がもつ抗ヒスタミン作用と合わせて、さらに強い抗ヒスタミン効果を持つことが確認されています。

ルパフィン

写真 ルパフィン錠(10mg) 田辺三菱製薬
https://medical.mt-pharma.co.jp/di/product/rpa/
医薬品添付文書: https://image.packageinsert.jp/pdf.php?yjcode=4490034F1022

デザレックス

写真 デザレックス錠(5mg) キョーリン製薬
https://www.kyorin-pharm.co.jp/prodinfo/medicine/details/products002161/
医薬品添付文書: https://image.packageinsert.jp/pdf.php?yjcode=4490032F1023

ルパフィン錠デザレックス錠は、
抗ヒスタミン薬に分類されています。

Th2サイトカイン阻害薬

今までご紹介した薬とはすこし毛色の違う薬があります。それは、Th2サイトカイン阻害薬と呼ばれる薬です。

Th2とは、Th2細胞(2型ヘルパーT細胞)のことです。Th2細胞からの、IL-4、IL-5、IL-13産生を抑制することによって、好酸球の浸潤を抑制したり、抗原に対するIgE産生を抑制したりする効果があります。さらに肥満細胞からのヒスタミン遊離抑制効果をもつとされています。(ケミカルメディエイター遊離抑制薬)

IL (interleukin) インターロイキン

IL-4は免疫応答のとき、活性化B細胞に作用してIgE産生を促進する働きがあります。
IL-13もIL-4とほぼ同じ働きがあります。
したがって、IL-4、IL-13の減少は、IgE産生の抑制につながります。

IgEが減少することによって、肥満細胞での脱顆粒が少なくなりますので、結果的にアレルギー反応は抑制されます。

IL-5は、骨髄で好酸球分化を促進して、好酸球を血液中へ動員します。すなわち好酸球を増やす働きをします。

この薬は、スプラタストトシル酸塩(商品名 アイピーディー)です。

アイピーディー

写真 アイピーディーカプセル(100mg)
(一般名 スプラタストトシル酸塩) 大鵬製薬
https://www.taiho.co.jp/medical/product/detail/index.html?_productGroupId=3
医薬品添付文書: https://pins.japic.or.jp/pdf/newPINS/00000238.pdf

ケミカルメディエイター遊離抑制薬

肥満細胞が脱顆粒して、細胞内からヒスタミンなどのケミカルメデイエーターが放出されるのを抑制する薬が、ケミカルメディエイター遊離抑制薬です。

肥満細胞から放出される物質は、ヒスタミン以外に、ロイコトリエン、プロスタグランジンD2、トロンボキサンA2、PAF(血小板活性化因子)などがあります。

ここで紹介する薬は、これらのアレルギーを起こす物質が放出されないように、未然に防ぐ働きをします。

リザベン

リザベンカプセル(100mg)。 キッセイ薬品
代表的なケミカルメデイエーター遊離抑制薬です。
https://www.triple-farm.com/sg/item/detail?item_prefix=TF&item_code=009039&item_branch=001
医薬品添付文書: https://med.kissei.co.jp/dst01/pdf/di_rz.pdf

後発品は、トラニラスト(100mg)。

トラニラスト

トラニラストカプセル100mg「トーワ」。
https://med.towayakuhin.co.jp/medical/product/product.php?id=T001712201709111449042w
医薬品添付文書: https://image.packageinsert.jp/pdf.php?yjcode=4490002M1455

リザベン、トラニラストには、アレルギー性鼻炎以外に「ケロイド、肥厚性瘢痕治療薬」としての適応があります。

アレギサール

アレギサール錠10mg。  ニプロファーマ
https://www.nipro-es-pharma.co.jp/product/di/productdetail.php?id=6366
医薬品添付文書: https://image.packageinsert.jp/pdf.php?yjcode=4490011F1021

後発品はペミラストン。

ペミラストン

ペミラストン錠10mg。 
https://www.qlife.jp/meds/rx14568.html
医薬品添付文書: https://image.packageinsert.jp/pdf.php?yjcode=4490011F1030

ソルファ

ソルファ錠25mg。
https://medical.nikkeibp.co.jp/leaf/mem/pub/di/column/sako/201711/553570.html
医薬品添付文書: https://s3-ap-northeast-1.amazonaws.com/drug.medpeer.jp/package_inserts/4490006F2027.pdf

ケタス

ケタスカプセル(10mg)。
https://www.kyorin-pharm.co.jp/prodinfo/medicine/details/products000072/
医薬品添付文書:
https://image.packageinsert.jp/pdf.php?yjcode=4490010N1021

クロモグリク酸ナトリウム細粒小児用10%

クロモグリク酸ナトリウム細粒小児用10% (100 mg)
http://www.tatsumi-kagaku.com/public/info_medical/list.php?submit_filePreview&id=9388b4995a53013adafd2d83f4f07163
医薬品添付文書: http://www.tatsumi-kagaku.com/public/info_medical/list.php?submit_download=1&file_path=..%2F..%2Ffile%2Ffile%2F508_1.pdf

今ご紹介したのが、ケミカルメディエイター遊離抑制薬です。

最後は、みなさんが耳鼻科でもらって飲んだことがある、見たことがある代表的な薬、2種類について書きます。

抗ロイコトリエン薬抗ヒスタミン薬の2種類です。

今までご紹介した薬が代表的な薬ではない、などということは一切ありません。現に最も新しい薬は、デザレックス錠ルパフィン錠です。

抗ロイコトリエン薬

ロイコトリエンは肥満細胞が脱顆粒するときに、アラキドン酸カスケード反応によって肥満細胞から産生されます。

ロイコトリエンは、おもに鼻づまりを起こすケミカルメディエイターです。

ロイコトリエンの働きをブロックするのが、ロイコトリエン受容体拮抗薬(抗ロイコトリエン薬)です。

この薬は、ロイコトリエンがロイコトリエン受容体に結合するのをブロックする働きがあります。

ロイコトリエン(CysLT システイニルロイコトリエン)は、気管支平滑筋収縮作用、血管拡張、血管透過性亢進、好酸球増多などの作用があります。

ロイコトリエン受容体は、CysLT(システイニルロイコトリエン)受容体として、CysLT1-4の4種類あります。このうち、アレルギー性鼻炎や喘息に関与する受容体は、CysLT1と言われています。

したがってロイコトリエン受容体拮抗薬は、これらの働きをブロックするため、気管支平滑筋の収縮を抑制して気道を拡げて喘息を改善します。さらに、鼻粘膜の血管拡張や血管透過性を抑制して滲出液の増加や浮腫による鼻閉を改善します。

ロイコトリエンによって鼻粘膜の血管の拡張や血管透過性の亢進が起こると、血管内から鼻粘膜へ血漿成分が出ていき、鼻粘膜に水分が貯留します。さらにロイコトリエンの働きで血管拡張が起こると鼻粘膜が充血します。血液と水分で膨らんだ鼻粘膜が、強力な鼻づまりを起こしてきます。

だから、ロイコトリエンをブロックする薬は、鼻づまりに効くのです。

ロイコトリエンをブロックする抗ロイコトリエン薬には、オノンカプセル、キプレス錠、シングレア錠などがあります。

オノン 

オノンカプセル(112.5mg)。
https://www.qlife.jp/meds/rx10397.html
医薬品添付文書: https://image.packageinsert.jp/pdf.php?yjcode=4490017M1036
後発品は、プランルカストカプセル。

プランルカスト

プランルカストカプセル(112.5mg)。
https://med.sawai.co.jp/preview.php?prodid=1241&prodname=%E3%83%97%E3%83%A9%E3%83%B3%E3%83%AB%E3%82%AB%E3%82%B9%E3%83%88%E3%82%AB%E3%83%97%E3%82%BB%E3%83%AB112.5mg%E3%80%8C%E3%82%B5%E3%83%AF%E3%82%A4%E3%80%8D
医薬品添付文書: https://med.sawai.co.jp/file/pr1_1241.pdf

キプレス

キプレス錠(10mg)。
https://www.kyorin-pharm.co.jp/prodinfo/medicine/details/products000103/
医薬品添付文書: https://image.packageinsert.jp/pdf.php?yjcode=4490026F2040
後発品は、モンテルカスト錠(10mg)。

モンテルカスト

モンテルカスト錠(10mg)。
https://med.sawai.co.jp/preview.php?prodid=4611&prodname=%E3%83%A2%E3%83%B3%E3%83%86%E3%83%AB%E3%82%AB%E3%82%B9%E3%83%88%E9%8C%A010mg%E3%80%8C%E3%82%B5%E3%83%AF%E3%82%A4%E3%80%8D
医薬品添付文書: https://med.sawai.co.jp/file/pr1_4611.pdf

オノンカプセル(後発品プランルカストカプセル)、キプレス錠(後発品モンテルカスト錠)の2種類の薬が市場に出回っている有力な「抗ロイコトリエン薬」です。

これら抗ロイコトリエン薬は、とくに鼻づまりに効果があります。

抗ヒスタミン薬

最後に、耳鼻咽喉科でやはり最も多く処方されている抗ヒスタミン薬について書きます。

アレルギー性鼻炎の薬の中で最も有名な薬の種類です。みなさん、抗ヒスタミン薬という言葉は一度ならず聞いたことがあるかもしれません。

すでに鼻粘膜下にヒスタミンが放出されてしまっていて、くしゃみ、鼻水がズルズル…の状態に効果がある薬です。すなわち、みなさんがよく経験される、花粉症が始まってしまってから慌てて薬を求めるときに、有効な薬です。

肥満細胞の脱顆粒が起こって、中のヒスタミンが放出されないようにするのが、ケミカルメディエイター遊離抑制薬でした。

しかし、すでに大量のヒスタミンが放出されて、花粉症、アレルギー性鼻炎がすでに起こってしまっている場合はどうでしょう。ヒスタミンがすでに放出されてしまっているのですから、今度は、放出されたヒスタミンが悪さをする前にブロックしなければなりません。

ヒスタミンは、鼻粘膜の三叉神経終末にあるヒスタミンH1受容体に作用して、くしゃみ、鼻水を起こします。

“ヒスタミン受容体は、H1、 H2、 H3、H4の4種類がありますが、このうちアレルギー性鼻炎に関係するのはH1受容体です。”

抗ヒスタミン薬は、肥満細胞から放出されたヒスタミンが鼻粘膜のヒスタミンH1受容体に結合するのをブロックします。

多くの患者さんは、事前にアレルギーを起こさないようにするよりも、どうしてもハウスダストの鼻炎や花粉症が始まってしまってから医療機関を受診します。したがって、すでに大量のヒスタミンが出ていても効果がある「抗ヒスタミン薬」が必然的に、アレルギー性鼻炎の薬物治療の中心となるのです。

抗ヒスタミン薬の分類

抗ヒスタミン薬は、大きく分けて第一世代抗ヒスタミン薬、第二世代抗ヒスタミン薬の2種類があります。

現在多く処方されているのは、効果や副作用の点などから、第二世代抗ヒスタミン薬が圧倒的に主流です。第一世代の薬を説明するとすこし煩雑になりますので、今回はみなさんが内服されたことが多い、または見たこと聞いたことがある、第二世代抗ヒスタミン薬に絞って説明したいと思います。
それでは、順に見ていきましょう。

まず、どんな薬があるのでしょう。薬の一覧です。一般名は馴染みがないでしょうから分かりやすく商品名に統一します。

純粋に抗ヒスタミン作用のみを有する薬先に書いたルパフィンなど抗ヒスタミン作用以外の作用機序を有する特殊な薬もあります。
これらも抗ヒスタミン薬として分類されている薬は、すべて抗ヒスタミン薬として統一しています。

第二世代抗ヒスタミン薬  一覧

ザジテン

ザジテンカプセル(1mg)。
https://meds.qlifepro.com/detail/4490003M1263/%E3%82%B6%E3%82%B8%E3%83%86%E3%83%B3%E3%82%AB%E3%83%97%E3%82%BB%E3%83%AB%EF%BC%91%EF%BD%8D%EF%BD%87
医薬品添付文書: https://image.packageinsert.jp/pdf.php?yjcode=4490003M1263
「ノバルティスファーマ」

ケトチフェン

ケトチフェンカプセル(1mg)。 
https://med.sawai.co.jp/preview.php?prodid=75&prodname=%E3%82%B1%E3%83%88%E3%83%81%E3%83%95%E3%82%A7%E3%83%B3%E3%82%AB%E3%83%97%E3%82%BB%E3%83%AB1mg%E3%80%8C%E3%82%B5%E3%83%AF%E3%82%A4%E3%80%8D
医薬品添付文書: https://med.sawai.co.jp/file/pr1_75.pdf
「サワイ」

アゼプチン

アゼプチン(1mg)錠。   「エーザイ」
https://medical.eisai.jp/products/ast/ast_t1
医薬品添付文書: https://medical2.eisai.jp/fileviewer/pdf_downloader.php?access_key=fk2vd402uu
「エーザイ」

アゼラスチン塩酸塩
アゼプチンのジェネリック薬です。

アゼラスチン塩酸塩錠(1mg)。  https://www.qlife.jp/meds/rx43632.html#google_vignette
医薬品添付文書: https://image.packageinsert.jp/pdf.php?yjcode=4490004F1129
「トーワ」

ニポラジン

ニポラジン錠(3mg)
https://meds.qlifepro.com/detail/4413004F1200/%E3%83%8B%E3%83%9D%E3%83%A9%E3%82%B8%E3%83%B3%E9%8C%A0%EF%BC%93%EF%BD%8D%EF%BD%87
医薬品添付文書: https://image.packageinsert.jp/pdf.php?yjcode=4413004F1200
「アルフレッサファーマ」

ゼスラン
ニポラジンと同じ薬です。

ゼスラン錠(3mg)。
https://meds.qlifepro.com/detail/4413004F1251/%E3%82%BC%E3%82%B9%E3%83%A9%E3%83%B3%E9%8C%A0%EF%BC%93%EF%BD%8D%EF%BD%87
医薬品添付文書: https://image.packageinsert.jp/pdf.php?yjcode=4413004F1251
「旭化成ファーマ」

ニポラジン小児用細粒0.6%

ニポラジンの小児用製剤です。
https://meds.qlifepro.com/detail/4413004C2030/%E3%83%8B%E3%83%9D%E3%83%A9%E3%82%B8%E3%83%B3%E5%B0%8F%E5%85%90%E7%94%A8%E7%B4%B0%E7%B2%92%EF%BC%90%EF%BC%8E%EF%BC%96%EF%BC%85
医薬品添付文書: https://image.packageinsert.jp/pdf.php?yjcode=4413004C2030
「アルフレッサファーマ」

メキタジン

メキタジン錠(3mg)。    「タイヨー」 
        https://meds.qlifepro.com/detail/4413004F1219/%E3%83%A1%E3%82%AD%E3%82%BF%E3%82%B8%E3%83%B3%E9%8C%A0%EF%BC%93%EF%BD%8D%EF%BD%87%E3%80%8C%E3%82%BF%E3%82%A4%E3%83%A8%E3%83%BC%E3%80%8D
医薬品添付文書: https://image.packageinsert.jp/pdf.php?yjcode=4413004C1042

レミカット

レミカットカプセル(2mg)。  「興和」
https://meds.qlifepro.com/detail/4490013M2034/%E3%83%AC%E3%83%9F%E3%82%AB%E3%83%83%E3%83%88%E3%82%AB%E3%83%97%E3%82%BB%E3%83%AB%EF%BC%92%EF%BD%8D%EF%BD%87
医薬品添付文書: https://image.packageinsert.jp/pdf.php?yjcode=4490013M1038

エメダスチンフマル酸塩徐放カプセル
レミカットカプセルのジェネリック薬です。

エメダスチンフマル酸塩徐放カプセル2mg。
https://meds.qlifepro.com/detail/4490013M2050/%E3%82%A8%E3%83%A1%E3%83%80%E3%82%B9%E3%83%81%E3%83%B3%E3%83%95%E3%83%9E%E3%83%AB%E9%85%B8%E5%A1%A9%E5%BE%90%E6%94%BE%E3%82%AB%E3%83%97%E3%82%BB%E3%83%AB%EF%BC%92%EF%BD%8D%EF%BD%87%E3%80%8C%E3%83%88%E3%83%BC%E3%83%AF%E3%80%8D
医薬品添付文書: https://image.packageinsert.jp/pdf.php?yjcode=4490013M1054
「トーワ」

アレサガテープ

アレサガテープ8mg。   「久光」
経皮吸収型アレルギー性鼻炎治療剤です。24時間貼付式の画期的な薬剤です。
内服薬ではありませんが、レミカットと同じ成分のエメダスチン酸フマル酸塩ですので、ここにご紹介しています。
https://meds.qlifepro.com/detail/4490700S2025/%E3%82%A2%E3%83%AC%E3%82%B5%E3%82%AC%E3%83%86%E3%83%BC%E3%83%97%EF%BC%98%EF%BD%8D%EF%BD%87
医薬品添付文書: https://image.packageinsert.jp/pdf.php?yjcode=4490700S1029

アレジオン

アレジオン20mg。
「日本ベーリンガーインゲルハイム」  
https://maiplemedical.com/products/alegion-tablet-20-300-tablets-japan-boehringer
医薬品添付文書: https://www.bij-kusuri.jp/leaflet/attach/pdf/al_t10_pi.pdf

エピナスチン
アレジオンのジェネリック薬です。

エピナスチン塩酸塩20mg。  「サワイ」
https://med.sawai.co.jp/preview.php?prodid=41&prodname=%E3%82%A8%E3%83%94%E3%83%8A%E3%82%B9%E3%83%81%E3%83%B3%E5%A1%A9%E9%85%B8%E5%A1%A9%E9%8C%A020mg%E3%80%8C%E3%82%B5%E3%83%AF%E3%82%A4%E3%80%8D
医薬品添付文書: https://med.sawai.co.jp/file/pr1_41.pdf

エバステル

エバステル10mg。 meiji seika ファルマ
上写真は2019年以前。
下写真は2019年、製品包装変更後。
https://www.meiji-seika-pharma.co.jp/medical/product_med/item/000040/item_detail.html
医薬品添付文書: https://s3-ap-northeast-1.amazonaws.com/drug.medpeer.jp/package_inserts/4490019F2024.pdf

エバスチン
エバステルのジェネリック薬です。

エバスチン錠10mg「CH」
日本ジェネリック
https://medical.nihon-generic.co.jp/medical/4490019F2032/
医薬品添付文書: https://medical.nihon-generic.co.jp/uploadfiles/medicine/EBASC00_PI.pdf

ジルテック

ジルテック10mg。   GSK 第一三共
https://kosei.com/item/28384
医薬品添付文書: https://image.packageinsert.jp/pdf.php?yjcode=4490020F1020

セチリジン
ジルテックのジェネリック薬です。

セチリジン塩酸塩10mg。   「サワイ」
https://med.sawai.co.jp/preview.php?prodid=1138&prodname=%E3%82%BB%E3%83%81%E3%83%AA%E3%82%B8%E3%83%B3%E5%A1%A9%E9%85%B8%E5%A1%A9%E9%8C%A010mg%E3%80%8C%E3%82%B5%E3%83%AF%E3%82%A4%E3%80%8D
医薬品添付文書: https://med.sawai.co.jp/file/pr1_1138.pdf

タリオン

タリオン10mg。  UBE 田辺三菱製薬  
https://meds.qlifepro.com/detail/4490022F2034/%E3%82%BF%E3%83%AA%E3%82%AA%E3%83%B3%E9%8C%A0%EF%BC%91%EF%BC%90%EF%BD%8D%EF%BD%87
医薬品添付文書: https://image.packageinsert.jp/pdf.php?yjcode=4490022F1038

ベポタスチンベシル酸塩
タリオンのジェネリック薬です。

ベポタスチンベシル酸塩錠10mg。「サワイ」https://med.sawai.co.jp/preview.php?prodid=4625&prodname=%E3%83%99%E3%83%9D%E3%82%BF%E3%82%B9%E3%83%81%E3%83%B3%E3%83%99%E3%82%B7%E3%83%AB%E9%85%B8%E5%A1%A9%E9%8C%A010mg%E3%80%8C%E3%82%B5%E3%83%AF%E3%82%A4%E3%80%8D
医薬品添付文書: https://med.sawai.co.jp/file/pr1_4625.pdf

アレグラ

アレグラ60mg。     サノフィ(株)
https://www.qlife.jp/meds/rx10345.html
医薬品添付文書: https://image.packageinsert.jp/pdf.php?yjcode=4490023F1024

フェキソフェナジン
アレグラのジェネリック薬です。

フェキソフェナジン塩酸塩60mg。「サワイ」https://med.sawai.co.jp/preview.php?prodid=1535&prodname=%E3%83%95%E3%82%A7%E3%82%AD%E3%82%BD%E3%83%95%E3%82%A7%E3%83%8A%E3%82%B8%E3%83%B3%E5%A1%A9%E9%85%B8%E5%A1%A9%E9%8C%A060mg%E3%80%8C%E3%82%B5%E3%83%AF%E3%82%A4%E3%80%8D
医薬品添付文書: https://med.sawai.co.jp/file/pr1_1535.pdf

ディレグラ
アレグラの成分のフェキソフェナジン塩酸塩30mgと塩酸プソイドエフェドリン60mgを1錠中に配合した薬剤です。
塩酸プソイドエフェドリンの効果で鼻づまりにとくに効果があります。成人または12歳以上の小児で1日4錠内服します。
鼻閉症状がとくにひどい場合のみ、通常2週間を目安に投与されます。

ディレグラ配合錠。     サノフィ(株)
https://meds.qlifepro.com/detail/4490100F1021/%E3%83%87%E3%82%A3%E3%83%AC%E3%82%B0%E3%83%A9%E9%85%8D%E5%90%88%E9%8C%A0
医薬品添付文書: https://image.packageinsert.jp/pdf.php?yjcode=4490100F1021

プソフェキ配合錠
ディレグラ配合錠のジェネリック薬です。

プソフェキ配合錠   「SANIK」
https://www.nichiiko.co.jp/medicine/product/64840
医薬品添付文書: https://www.nichiiko.co.jp/medicine/file/64840/attached_pdf/64840_attached.pdf

アレロック

アレロック5mg。    協和キリン
https://www.qlife.jp/meds/rx8735.html
医薬品添付文書: https://image.packageinsert.jp/pdf.php?yjcode=4490025F1023

オロパタジン
アレロックのジェネリック薬です。

オロパタジン塩酸塩錠5mg。   「サワイ」
https://med.sawai.co.jp/preview.php?prodid=1435&prodname=%E3%82%AA%E3%83%AD%E3%83%91%E3%82%BF%E3%82%B8%E3%83%B3%E5%A1%A9%E9%85%B8%E5%A1%A9%E9%8C%A05mg%E3%80%8C%E3%82%B5%E3%83%AF%E3%82%A4%E3%80%8D
医薬品添付文書: https://med.sawai.co.jp/file/pr1_1435.pdf

クラリチン

クラリチン10mg。   バイエル薬品
https://www.qlife.jp/meds/rx41181.html
医薬品添付文書: https://image.packageinsert.jp/pdf.php?yjcode=4490027F1022

ロラタジン
クラリチンのジェネリック薬です。

ロラタジン錠10mg。     「サワイ」
https://med.sawai.co.jp/preview.php?prodid=1362&prodname=%E3%83%AD%E3%83%A9%E3%82%BF%E3%82%B8%E3%83%B3%E9%8C%A010mg%E3%80%8C%E3%82%B5%E3%83%AF%E3%82%A4%E3%80%8D
医薬品添付文書: https://med.sawai.co.jp/file/pr1_1362.pdf

ザイザル

ザイザル5mg。
 GSK グラクソスミスクライン
https://www.qlife.jp/meds/rx18209.html
医薬品添付文書: https://image.packageinsert.jp/pdf.php?yjcode=4490028F1027

レボセチリジン
ザイザルのジェネリック薬です。

レボセチリジン塩酸塩錠5mg。
「日本ジェネリック」
https://medical.nihon-generic.co.jp/medical/4490028F1043/
医薬品添付文書: https://medical.nihon-generic.co.jp/uploadfiles/medicine/LEVCE_PI.pdf

ビラノア

ビラノア20mg。  meiji seika ファルマ
https://meds.qlifepro.com/detail/4490033F1028/%E3%83%93%E3%83%A9%E3%83%8E%E3%82%A2%E9%8C%A0%EF%BC%92%EF%BC%90%EF%BD%8D%EF%BD%87
医薬品添付文書: https://image.packageinsert.jp/pdf.php?yjcode=4490033F1028

デザレックス

デザレックス5mg。 MSD 杏林製薬(株)
https://www.kyorin-pharm.co.jp/prodinfo/medicine/details/products002161/

医薬品添付文書:
https://www.kyorin-pharm.co.jp/prodinfo/medicine/pdf/a_desalex.pdf

ルパフィン

ルパフィン10mg。   「帝國製薬」
https://www.qlife.jp/meds/rx44436.html
医薬品添付文書: https://image.packageinsert.jp/pdf.php?yjcode=4490034F1022

これらの薬は代表的な抗ヒスタミン薬です。

ダブル効果?

抗ヒスタミン薬は、実際には先に書きましたように、肥満細胞から大量に放出されたヒスタミンをブロックするだけではありません。

抗ヒスタミン薬は、じつは肥満細胞からヒスタミンが放出されるのをブロックする、いわゆるケミカルメデイエーター遊離抑制作用も有している薬剤が多いのです。その作用の強さは各種薬剤に委ねられますが、ヒスタミン受容体ブロックという単一の薬理作用のみではないものも多くあるのです。

これが、抗ヒスタミン薬がアレルギー性鼻炎の薬物療法の中心的存在になっている1つの大きな理由かもしれません。

抗ヒスタミン薬は、実際にはこれらの薬にそれぞれ半分量の錠剤、OD錠(口腔内溶解錠)などがあり、あわせて非常に多くの種類になっています。

本当はこれらのすべての薬について、1つ1つ、薬の効果、特徴、副作用などを詳しく説明したいのですが、情報が膨大な量になるためすこし困難です。

そこで、一般に抗アレルギー薬の内服で最も問題になる、いくつかの副作用について説明したいと思います。

さらに、抗アレルギー薬について最も話題になる副作用、眠気についてすこし解説したいと思います。

抗アレルギー薬の禁忌は?

薬の内服に当たって、絶対に飲めないことを「禁忌」と言います。
また絶対に飲めないことはありませんが強い副作用が起こる可能性があり気をつけなければならない場合を「慎重投与」と言います。

基本的に、抗アレルギー薬の禁忌は多くはありません。

一般に薬の副作用には、その薬剤に対する重篤な過敏症(アナフィラキシー)、薬疹、蕁麻疹などの皮膚症状、肝機能障害、腎機能障害、悪心嘔吐や下痢などの消化器症状、緑内障や白内障などの眼科症状、排尿障害などの泌尿器症状、不安、抑うつ、などの精神神経症状などがあります。

抗アレルギー薬(アレルギーの薬)は、もともとアレルギー反応を抑制するための薬ですので、重篤なアレルギー反応は起きにくくなっており、薬疹や蕁麻疹などに対しても使用する薬ですので、皮膚症状もあまり心配はいりません。肝機能腎機能などについても、原則として年単位などの長期間投与を考慮して開発されていますので、それほど心配なことはありません。ただし、高齢者では生理的に肝代謝機能、腎代謝機能の低下が起こってきますので、血液中の薬剤が代謝されにくく蓄積してしまい、血中濃度が上昇する傾向があります。そのため、同じ薬でもフラフラしたり、場合によっては転倒のリスクが高くなることも考えられます。

眼圧上昇と排尿障害のみ

第一世代の抗ヒスタミン薬だけは、きちんと説明しておかなければなりません。

第一世代の抗ヒスタミン薬は、強い眠気があるものが多く、それ以外にも、口渇、便秘、排尿障害などの副作用がつよく出現することで有名です。(抗コリン作用)

抗コリン作用とは、神経と神経が繋がるシナプスにおいて、神経伝達物質として働くアセチルコリン(Ach)がアセチルコリン受容体の1つであるムスカリン受容体に結合するのを、抗ヒスタミン薬がブロックしてしまうために起こります。

* 抗コリン作用をもつ薬は、抗ヒスタミン薬だけだはありません。感冒薬、睡眠薬、酔い止め薬、抗うつ薬などにも抗コリン作用をもつ成分が含まれているため注意が必要です。

この中でとくに注意しておかなければならないものは、緑内障の方への投与による眼圧上昇前立腺肥大の方への投与による排尿障害です。この副作用は、第二世代抗ヒスタミン薬にも共通です。

抗ヒスタミン薬の眠気は?

アレルギーの薬は眠くなる。
一般にはそう言われています。

それはある意味、正解です。実際に第一世代の抗ヒスタミン薬には強い眠気があるものが多く、自動車の運転や危険を伴う機械等の運転は禁止されてきました。

この理由は、生体内のヒスタミン受容体の分布にあります。抗ヒスタミン薬が作用するヒスタミン受容体はH1受容体ですが、このH1受容体は脳内にも存在します。すなわち、抗ヒスタミン薬を服用すると、脳内のヒスタミンH1受容体にも結合するのです。

ヒスタミンは脳内では、H1受容体と結合することで、脳の覚醒や興奮作用を維持するために働いています。

ヒスタミンと受容体の関係

抗ヒスタミン薬はヒスタミンH1受容体を占拠する(=結合する)ことで、ヒスタミンがヒスタミンH1受容体に結合できないようにする薬です。すなわち、ヒスタミンが受容体に結合する前に、先に受容体の結合部分を埋めてしまうことで、ヒスタミンが結合できなくなるのです。

綺麗な図ではありませんが、ご容赦ください。ヒスタミンH1受容体🟦の結合部位が、抗ヒスタミン薬によって占拠されてしまうため、ヒスタミン🟥が受容体🟦に結合できなくなっています。
これは抗ヒスタミン薬のアンタゴニスト作用と呼ばれています。

現在、抗ヒスタミン薬には、ヒスタミン受容体を占拠して結合できなくするアンタゴニスト作用だけでなく、”ヒスタミン受容体の数そのものを減らす” 働きがあることがわかっています。これは、アンタゴニスト作用と逆であることから、”インバースアゴニスト作用”と呼ばれています。
(この事実については後述します。)

鼻では善玉、脳では悪玉

脳内のヒスタミンH1受容体は、ヒスタミンが結合することで脳が覚醒しているのですから、ヒスタミンが脳内のヒスタミンH1受容体に結合できなくなると脳の覚醒効果が激減して脳の鎮静化が起こります。これが、抗ヒスタミン薬による眠気です。

このため、花粉症やアレルギー性鼻炎で抗ヒスタミン薬を内服すると、抗ヒスタミン薬による脳内H1受容体占拠によって、眠気が起こってしまうのです。

抗ヒスタミン薬は、鼻粘膜では善玉ですが、脳では悪玉になり得るのです。

第一世代の抗ヒスタミン薬の多くはヒスタミンH1受容体の占拠率が高いことが特徴でした。したがってほとんどすべての薬が比較的つよい眠気を起こしていました。

第一世代抗ヒスタミン薬の中には、ヒスタミンH1受容体の占拠率が50%を超える薬がいくつもあり、80%以上に達する薬もあります。
これはほとんどアルコール飲酒にも匹敵する脳内鎮静化と言えます。実際、第一世代の抗ヒスタミン薬の中には、このつよい眠気を利用して睡眠薬として処方されることも少なくありませんでした。

* 最も脳内H1受容体占拠率の高い薬は、α-クロルフェニラミンマレイン酸塩(注)で、85%に達しています。

第一世代の抗ヒスタミン薬は、抗コリン作用があります。アセチルコリン受容体も占拠するのです。アセチルコリン受容体には、ニコチン受容体とムスカリン受容体の2種類があります。このうち第一世代抗ヒスタミン薬は、ヒスタミンH1受容体だけでなく、ムスカリン受容体のM1受容体も占拠します。M1受容体は脳内に存在します。(大脳皮質、海馬) このM1受容体は、アセチルコリンが結合することにより、神経の興奮、伝達に働くとされていて、記憶や学習に関与していると考えられています。

第一世代抗ヒスタミン薬がこのM1受容体を占拠してしまうと、アセチルコリンがM1受容体に結合できなくなります。そのため、神経の興奮が伝わらなくなってしまい、記憶や学習に影響が出てしまうとされています。

この第一世代の抗ヒスタミン薬による脳内のムスカリンM1受容体占拠も、脳内のヒスタミンH1受容体の占拠と同様の働きをもたらします。

* 第一世代抗ヒスタミン薬は、脳内のヒスタミンH1受容体と同時にムスカリンM1受容体の双方を占拠するように働くことが、つよい眠気の副作用を起こす原因と思われます。

さらにもう1つ、第一世代の抗ヒスタミン薬が脳内の受容体にダイレクトに作用してしまう原因があります。それは、第一世代の抗ヒスタミン薬が脳内に吸収されやすいことです。

脳は生体にとって非常に重要な臓器です。動物は、瞬時の判断で敵から逃げたり、生きるために餌を確保したりしますが、そのために脳は常に体をコントロールしておく必要があります。血管内に吸収された薬物やときに毒物が脳を麻痺させると、外敵に襲われたとき逃げることができず生命の維持が困難になります。そのため、生体には脳内を走行している血管内の物質のうち、脳に必要な物質だけが脳血管のバリアを通過して脳に吸収される仕組みがあります。これが”血液脳関門(Blood Brain Barrier)“の存在です。

https://en.m.wikipedia.org/wiki/Blood%E2%80%93brain_barrier

脳血管を突起のある星状膠細胞(アストロサイト)が取り囲んでいます。この構造が血液脳関門と呼ばれる脳血管のバリア機構です。要は、脳内の血管からは簡単に物質が移動できないような構造になっているのです。血液脳関門の透過性にはP糖タンパクと呼ばれる物質が関与していることが知られています。

血液脳関門については、詳しく説明すると長くなりますのでここではその機能だけ述べることにしました。

第一世代の抗ヒスタミン薬は脂溶性のため、多くの薬がこの血液脳関門を簡単に通り抜けていました。そのため、大量の抗ヒスタミン薬が脳内に吸収されて、脳内の多くのヒスタミンH1受容体を占拠していたのです。そのため、非常につよい眠気が起こり、アレルギーの薬として処方されると同時に睡眠薬としてもつよい効果をあらわす薬でした。

第二世代抗ヒスタミン薬の特徴は?

第二世代の抗ヒスタミン薬の多くは、この点が改善されており、まず血液脳関門を通過しにくくなっています。さらに第二世代の抗ヒスタミン薬は脳内のH1受容体の占拠率がかなり減少しています。(多くの薬は20%以下です。)

それでも占拠率が0まではいかないため、わずかに眠気が生じたり、また自分でも気がつかないほどの認知機能低下(インペアードパフォーマンス Impaired performance)が起こると言われています。

これは一般の生活を送る方にはほとんど問題にならない程度のものですが、一流のアスリートや瞬時に正確な判断を求められる職業の方(航空機のパイロットなど)では、非常に大きな問題となります。そのため、このような特殊な場合には、内服する薬剤の選択がとくに重要になってきます。

脳内H1受容体占拠率は?

脳内のH1受容体占拠率を順に表したグラフがあります。これを見ると、第二世代抗ヒスタミン薬の多くがH1受容体占拠率10%-15%をしましています。H1受容体占拠率が20%未満で非鎮静性とみなされていますので、第二世代抗ヒスタミン薬の多くは、非鎮静性(=眠くならない)薬と言えます。

* 脳内ヒスタミンH1受容体占拠率が20%未満を非鎮静性、20%以上50%未満を軽度鎮静性、50%以上を鎮静性、薬剤と呼んでいます。

ここに、各種薬剤の脳内ヒスタミンH1受容体占拠率を比較したグラフがあります。

(文献1) 鼻アレルギー診療ガイドライン2020年版(改訂第9版)
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jibiinkoka/124/7/124_943/_pdf/-char/ja

この表は、薬の一般名で記載されています。
商品名に直すと上から順に、

ビラノア
アレグラ(60mg)
アレグラ(120mg)
デザレックス
ザイザル
アレジオン
エバステル
トリルダン(現在販売−)
ジルテック(10mg)
クラリチン
アレロック
タリオン
アゼプチン
ゼスラン、ニポラジン
ジルテック(20mg)
アステミゾール(現在販売−)

d-クロルフェニラミンマレイン酸塩(2mg)
=ポララミン(第一世代)
セルテクト(第二世代)
ジフェンヒドラミン=レスタミン(第一世代)
ヒドロキシジン=アタラックス(第一世代)
ケトチフェンフマル酸塩=ザジテン(第二世代)
d-クロルフェニラミンマレイン酸塩(5mg注)
=ポララミン(第一世代)

* プラセボデータとの比較のため、上の2つがマイナス値になっています。

* 発売時期と表作成時期より、この表には、ルパフィンが記載されていません。

この脳内H1受容体占拠率は、抗ヒスタミン薬の副作用として眠気を直接表す指標となります。

* したがって事実上は、上の薬剤の順番に脳内ヒスタミンH1受容体の占拠率が低いこと、すなわち”眠気が来ない”ことを表しています。

* この表を見る限り、眠気の副作用がない花粉症、アレルギー性鼻炎の薬は、ビラノア、アレグラ、デザレックスが、トップ3になっています。

一方で、H1受容体を占拠してしまい、ヒスタミンが受容体に結合できなくするのですから、占拠率が高ければ高いほど、抗ヒスタミン作用は強いことが予想されます。実際に、つよい眠気を持つ薬の一部は強い抗アレルギー作用を示すことでも知られています。

* 現在では、抗アレルギー薬の眠気と効果の強さには、直接の関係がないことが報告されています。

いったいどの薬が効くのか?

いったいどの抗ヒスタミン薬が効くのでしょうか。

抗ヒスタミン薬の強さについては、多くの先生方がホームページなどで論じておられます。

臨床医としての経験値科学的根拠に基づいて、いくつかのグラフが示されています。

多くのグラフが、薬の強さと眠気を、それぞれ縦軸と横軸に表したものです。

これらは全て正しいと思います。

実際に副作用として現れる「眠気」は、上に示したグラフに表されている脳内ヒスタミンH1受容体占拠率とほぼ相関します。

ただ、眠気の副作用と薬の強さ(効果)は、直線的ではありません。すなわち、「薬がつよい=眠気がつよい」というわけではないのです。

薬はどのように効くのか?


薬の吸収は?

「薬」という化学薬品について考えたとき、その化学物質が生体内でいったいどのような薬理作用を及ぼすか、は単純な話ではありません。

薬は、まず吸収されなければ効きません。飲んだ薬が溶解して吸収体となり、小腸で絨毛から吸収されると血液中に入り、上腸間膜静脈、下腸間膜静脈から門脈を通って肝臓に運ばれます。肝臓を1回通過した薬は大静脈へ入り、心臓へ達します。
これを(肝臓の)初回通過と呼んでいます。

薬剤の初回通過効果(肝臓での代謝)
Hepatic portal (門脈)
Splenic (脾静脈)
Superior mesenteric (上腸間膜静脈)
Inferior mesenteric (下腸間膜静脈)
https://ja.m.wikipedia.org/wiki/%E5%88%9D%E5%9B%9E%E9%80%9A%E9%81%8E%E5%8A%B9%E6%9E%9C

心臓から肺循環を通り、もう一度心臓へ戻った薬は今度は大動脈から全身に送り出されます。全身の血管は全ての臓器や組織に分布していますから、頭部顔面の血流を支配する外頸動脈から鼻の血液を供給している顎動脈へ、そして下鼻甲介などの鼻粘膜へと送られます。

大動脈から総頸動脈、外頸動脈と分岐して顎動脈(Maxillary Artery)へと至り、鼻腔粘膜へ血液が送られる
https://www.istockphoto.com/jp/%E3%83%99%E3%82%AF%E3%82%BF%E3%83%BC/%E4%BA%BA%E4%BD%93%E8%A7%A3%E5%89%96%E5%AD%A6%E3%81%AE%E7%A7%91%E5%AD%A6%E7%9A%84%E3%82%A4%E3%83%A9%E3%82%B9%E3%83%88%E9%A1%8E%E5%8B%95%E8%84%88-gm531010086-93618287

薬は、こうして長い道のりを辿って鼻粘膜にたどり着くのです。血液循環は時間にすれば非常に速く、一度血液中に吸収されてしまえば、鼻の粘膜に来るまでの時間はごく短時間です。このようにして血液中に溶けた薬の成分(化学物質)が鼻粘膜で薬理作用を表してくれるのです。

したがって当然ですが、腸での薬の吸収が良くないと、薬は効きません。

血中濃度は?

さらに、薬の吸収のされかたは、それぞれの薬で大きく違いがあります。いわゆる、血中濃度の推移がどうなのか、で薬の効き方はまた違ってきます。

薬を飲んでから、血液中(血漿中)の濃度が最高値に達するまでの時間を t max、最高血漿中濃度を C max、血漿中濃度が半分になるまでにかかる時間を t 1/2 といいます。

これらの数値は全ての薬によって決まっていて、これが体内での薬の働きに大きな影響を与えています。

最高血中濃度到達時間 t max

血中濃度が急激な上昇をする薬は、簡単に言えば速く効きます。薬の血中濃度が最高値に達するまでの時間を最高血中濃度到達時間 t max といいます。
この数値が小さいと薬は飲んでから早い時間で効いてきます。

最高血中濃度 C max

薬がどのくらい多く血液中に吸収されたか、という指標です。血液中の濃度が高ければ高いほど、薬の多くの成分が血液に溶け込んだことになります。

さまざまな理由でこの数値が低くなると、飲んだ薬の効果がなくなることになります。

半減期 t 1/2

半減期、という言葉があります。
薬の血中濃度が一定に達したあと、その濃度は徐々に代謝によって減少していきますが、薬の濃度がピークに達してから、ちょうど半分になる時点までの時間を、半減期と呼んでいます。t 1/2 で表します。

半減期は簡単に言うと、薬がどれだけゆっくり体内にとどまっているかを示していて、それは薬の作用時間と近似します。半減期が長いと、薬は長時間効いています。

有効血中濃度

もちろん薬には、有効血中濃度という概念があり、ある数値以上の血液中の濃度をとっていないと薬理作用が働かない、というものです。

薬の濃度がこの数値を下回れば、もちろん薬の効果は落ちてしまいます。これは、主に抗菌薬などで論じられます。

AUC

血中濃度曲線下面積、と言われます。

血中濃度の曲線グラフと横軸の間で囲まれる面積は、体内に吸収された薬がどれだけ多く利用されたか、を表しています。この面積が大きい薬は、多くの薬理作用を示したことになります。

薬の血中濃度曲線とC max, t max, t 1/2
C max 最高血中濃度(血漿中)
t max 最高血中濃度到達時間
t 1/2 半減期
AUC 血中濃度曲線下面積
青の点線は24時間毎の追加投与の血中濃度推移を示しています。
https://ja.m.wikipedia.org/wiki/%E5%8D%8A%E6%B8%9B%E6%9C%9F_(%E8%96%AC%E5%AD%A6)

生物学的利用能 バイオアベイラビリティ(bioavailability)

これは、生体に投与された薬が全身の血液中に入る割合を表しています。飲んだ薬が効くためには、血液中に溶け込まないといけませんが、いったいどのくらいの割合で血液中に吸収されたか、を数値で表しています。静脈内投与(注射、点滴など)を100%として、数値を比較します。この数値が高いほど、薬は標的臓器に到達しやすくなります。

バイオアベイラビリティの比較 
iv(静脈内投与) po(経口投与)
C 血漿中濃度
https://en.m.wikipedia.org/wiki/Bioavailability

体重

これは、最高血中濃度C max に関係します。
例えばビラノア錠は20mg、アレすロック錠は5mgです。花粉症が起こって1錠のめば、ビラノアではビラスチン20mgが、アレロックではオロパタジン塩酸塩5mgが腸から吸収されて血液中に溶け込みます。これは成人1錠ですので体重50Kgの人と体重100Kgの人では循環血液量が違いますので、血液中の濃度がかなり違ってきます。すなわち、初めから最高血中濃度C max が違っているのです。体重が違えば肝代謝能、腎機能も違いますので、もちろん半減期も違ってきます。

高齢者の肝代謝、腎排泄

薬はおもに肝臓で代謝され、腎から排泄されます。

近年、花粉症の高齢化も進み、70歳以上でも花粉症の症状に悩む患者さんも少なくありません。また高齢の方は、自律神経の変化からくる血管運動性鼻炎による多量の鼻水に悩んでいる方もたくさんおられます。

このようなことから、外来診療では、比較的高齢の方にも抗アレルギー薬を投与することが多くあります。

しかし、一般に高齢者の方は、自覚がなくても肝機能、腎機能が若年者に比べて低下しており、これは体内での薬の代謝、排泄に大きく関係してきます。すなわち、年齢的な肝機能低下、腎機能低下によって、薬がなかなか代謝されない、排泄されない、といった現象が起こりやすくなるのです。

花粉症で指示された通り、1日1回薬を内服すると、若い人たちに比べて薬が代謝されにくく、腎からの排泄もスムーズでないために、薬の血中濃度が高く推移しがちで、フラフラしたり、場合によっては転倒のリスクになることも考えられます。このような時は、1回の薬の内服量を半分に減らしたり、1日2回を1回にしたりして対応すべきです。

このように、薬の効果を論じるときは、つねに年齢的な考察も必要です。

薬理作用の個人差

薬剤を服用したあと、それが効果となって現れる事象は、ほとんど全ての人に平等に起こります。

但し、その最終的な効果には、全くの個人差が存在します。すなわち、すこし乱暴な言い方をすれば、薬は人によって効き方が違うのです。

例えば、全く同じ薬、アレグラ(60mg)錠を1錠飲んだとき、最高血中濃度 C max は、あなたとあなたの友人では、数値がすこし違うのです。もしかするとあなたの最高血中濃度はあまり上がっていないかもしれません。
腸からの薬の吸収率もすこし違うかもしれません。

半減期も、平均値は添付文書に示されていますが、それはあくまで平均値であり、あなたの半減期はもっと短くなっているかもしれません。薬の代謝スピードは個人差があります。あなたの肝臓は人よりずっと丈夫で機能がよく、薬をどんどん分解しているのかもしれません。逆にあなたの友人の半減期はすこし長めで、いつまでも血液中の濃度が下がらないのかもしれません。

あなたの血液脳関門(BBB)は人より少しだけ透過性がよく、抗ヒスタミン薬をより多く通過させてしまい、友人より眠くなりやすいのかもしれません。

あなたの脳にある、脳内ヒスタミンH1受容体は、同じ抗ヒスタミン薬に同じ%で占拠されても、人より眠気をたくさん感じるかもしれませんし、また逆に全然眠くならないかもしれないのです。

ヒスタミンH1受容体とインバースアゴニスト作用

脳内のヒスタミンH1受容体の占拠率の議論ばかりでしたが、本来、抗ヒスタミン薬は鼻粘膜で働きます。

鼻粘膜のヒスタミンH1受容体に抗ヒスタミン薬が結合して、「ヒスタミンが受容体に結合できなくする」、のが抗ヒスタミン薬の役目です。

この鼻粘膜に発現しているヒスタミンH1受容体ですが、何となくみんな同じである、と思い込んでいませんか?

ヒスタミンH1受容体は、鼻粘膜の粘膜下に分布している三叉神経終末に存在します。じつは、このヒスタミンH1受容体のうち、「ヒスタミンと結合できる」ヒスタミンH1受容体の数は、正確には一定ではないのです。

ヒスタミンH1受容体は、活性型不活性型の受容体が「動的」平衡状態を保って存在しています。すなわち、活性型の受容体と不活性型の受容体の数がそれぞれ、増えたり減ったりしながら常に変化していることを表しています。

  活性型 ↔️ 不活性型  (平衡状態)

” 活性型の受容体が増えると不活性型の受容体が減り、不活性型の受容体が増えると活性型の受容体が減ります。

ヒスタミンが、ヒスタミン受容体に結合できるのは、ヒスタミン受容体が活性型になっているときだけです。

もともと、ヒスタミンH1受容体は、ヒスタミンが存在しないときでも「活性型」になっていて、「不活性型」の受容体との間を自由に行き来して平衡状態を保っています。

言い換えると、活性型受容体は次の瞬間には不活性型に変化して、また活性型へと戻ることができるのです。

そして、この「活性型受容体」は、ヒスタミンに暴露されなくても、すなわち受容体が反応していないときでも、常に内因性のシグナルを発生しています。その内因性シグナルのはたらきによって細胞内でH1受容体遺伝子が発現して、ヒスタミンH1受容体の数が一定に保たれています。

活性型受容体はヒスタミン(黄色🟡)があってもなくても、内因性シグナルを発生しているhttps://clinicalcloud.jp/contents/1908

肥満細胞から放出されたヒスタミンが、鼻粘膜のヒスタミン受容体に結合できるのは、ヒスタミン受容体が活性型になっているときだけです。

今までの多くの抗ヒスタミン薬は、活性型不活性型を問わず、H1受容体に結合することで、ヒスタミンの結合をブロックする薬理作用を持っていました。
(ニュートラル・アンタゴニスト作用)

これでは、確かにヒスタミンは受容体に結合できなくなりますが、活性型受容体の数は減りません。さらに、活性型受容体にニュートラルアンタゴニストが結合しても活性型受容体から出される内因性シグナルはそのまま存在します。

活性型受容体から出る内因性シグナルによって、H1受容体遺伝子発現によるヒスタミンH1受容体の発現も起こり続けるため、活性型、不活性型を含めてヒスタミンH1受容体の総数は減りません。

しかし近年開発された一部の抗ヒスタミン薬には、不活性型のヒスタミン受容体と結合して不活性型の受容体を増加させて、活性型の受容体を減らす働きがあることがわかってきました。
(インバースアゴニスト作用)

インバースアゴニスト(🟣)が不活性型受容体をブロックすることで、不活性型の数が増え、活性型受容体の数が減っている。そのため、ヒスタミン(🟡)が作用してもアレルギー反応が出にくい。さらに内因性シグナルが少なくなっている。
https://clinicalcloud.jp/contents/1908
上記3枚の写真はすべて、

大阪大谷大学 薬学部薬理学講座教授 
水口博之先生
徳島大学大学院 耳鼻咽喉科学教授
北村嘉章先生  監修 

“インバースアゴニスト作用を有する抗ヒスタミン薬による初期療法・アレルギー反応抑制効果への期待”

Meiji Seika ファルマ株式会社 企画
TLV タイムラブスビジョン 製作

より引用しています。

それらの抗ヒスタミン薬は、インバースアゴニスト作用によって、不活性型の受容体に強力に結合して“不活性型受容体を固定して”しまうため、平衡状態が崩れて、活性型受容体の数が激減します。

さらに、これらのインバースアゴニスト作用をもつ抗ヒスタミン薬では、活性型受容体の数が減ることによって、内因性シグナルが減少します。

その結果、ヒスタミンH1受容体遺伝子が抑制され、ヒスタミンH1受容体の総数が激減してしまいます。

活性型受容体の数が減るということは、ヒスタミンが結合できる受容体そのものが減っていることです。さらに、ヒスタミンH1受容体の総数も減少しています。

この状態で、肥満細胞から大量のヒスタミンが放出されても、ヒスタミンはヒスタミンH1受容体とわずかしか結合できず、ヒスタミンの作用は少ししか現れません。

これが、インバースアゴニスト作用をもつ抗ヒスタミン薬の働きです。

ビラノア錠などは、このインバースアゴニスト作用を有する薬剤です。
長期間内服することによって、不活性型の受容体を増加させ固定して、(ヒスタミンが反応できる)活性型受容体の数を減らしてしまう、さらに内因性シグナルを減少させる、優れた薬理作用があります。

ビラノア錠以外の抗ヒスタミン薬の多くがほぼ、このインバースアゴニスト作用を持っています。

したがって、初期療法と言いますが、花粉症飛散前にビラノア錠などを飲み始めておくと、花粉飛散が始まっても花粉症の鼻症状がつよく抑制されて、鼻症状が出ても軽症ですみ、花粉飛散時期であってもより快適な日々を過ごすことが可能になります。
初期療法はビラノア錠に限らず、他のアレルギー薬でも大丈夫です。

薬理作用の個人差についての話題から、抗ヒスタミン薬のインバースアゴニスト作用の話題にまで議論が拡がりました。

このように考えてくると、ヒスタミン受容体の数は、個人ですら一定値を取らず、常に流動的に変化しているのですから、活性型ヒスタミン受容体の数や割合は、あなたとあなたの友人では当然、違っているかもしれません。

薬の構造式

もう1つ、書き残していることがあります。薬の化学式のことです。抗アレルギー薬には、大きく分けて3種類の基本的な化学構造式があります。

三環系
アレジオン、アレロック、クラリチン、デザレックス、ルパフィン

ピペリジン系
エバステル、アレグラ、ディレグラ、タリオン、ビラノア

ピペラジン系
ザイザル、ジルテック

(②ピペリジン系③ピペラジン系は類似構造。)

他の構造式に、アゼパン系(アゼプチン)、ジアゼパン系(ダレン、レミカット、アレサガテープ)、フェノチアジン系(ゼスラン、ニポラジン)などがあります。

これらのそれぞれ違う化学式をもつ薬の作用は、1人の個人に対して、少しずつ違う反応を示すことは容易に想像できます。

実際、外来診療で花粉症の薬を処方するときに、処方した薬があまりよく効かなかった場合など、化学構造式の違う薬を処方すると違った効果を認めることがあります。

鼻炎のタイプによっても違う、薬の効果

先に書きましたが、アレルギー性鼻炎や花粉症には、大きく2つのタイプがあります。

1つは、くしゃみ鼻水が多いタイプ、
1つは、鼻づまりがひどいタイプ、
または、くしゃみ鼻水、鼻づまりの全部がひどいタイプです。

先のアレルギー性鼻炎の起こるメカニズムを考えると、くしゃみ鼻水には、抗ヒスタミン薬が効きます。

また、鼻づまりには抗ロイコトリエン薬が効果があります。

これは、あなたとあなたの友人が、同じ花粉症に悩んでいても、くしゃみ鼻水が多い友人と、鼻づまりがひどいあなたでは、元来、適応となる薬そのものが違っていることを表しています。

この事実だけでも一概に、花粉症には、”この薬がいちばん効きます” とは、言えないことがわかります。

鼻炎の重症度

抗ヒスタミン薬の効果について議論していますが、臨床的には、こちらの方が重要なポイントかもしれません。

すなわち、簡単に言うと、ある人は重症のひどい鼻炎があり、ある人は軽症の鼻炎がある、ということです。

さらに、同じ花粉症がひどい患者さんの中にも、ハウスダストとスギ花粉症が合併している患者さんといれば、スギ花粉症単独の患者さんもいます。

アレルギー反応の個人差と言ったほうがよいかもしれません。鼻炎症状の個人差が大きい場合、これは個人個人の免疫応答の強さの違いが差になって現れているわけであり、一概に薬の薬理効果を比較することは無理があります。

鼻中隔湾曲症、ポリープなど…

花粉症の強さだけでなく、鼻症状は、例えば鼻中隔湾曲症があるかどうか、などでも薬の効き方は変わってきます。

高度の鼻中隔湾曲症が合併していると、抗ヒスタミン薬で下鼻甲介粘膜の腫脹が引いても、湾曲側の鼻腔の通気は改善しません。鼻中隔湾曲症が鼻づまりをひどくしているから、です。

同様に副鼻腔炎が合併していて鼻腔にポリープが認められる症例などでは、花粉症による鼻症状に副鼻腔炎による悪化と複雑化が加わり、単純な鼻づまりや鼻水の治療効果だけではなくなってきます。したがって、鼻症状に対する薬の効果を一元的に比較することはできません。

この事実は、いわゆる“病態に個人差がある”ことが、抗ヒスタミン薬の効果に大きな影響を与えてしまうことを示していて、薬の効果に個人差があることの1つの裏づけになります。

薬の個人差

多くの条件について書いてきましたが、これらのことを総合的に考えると、どの薬が効く、効かない、眠くなる、などの印象は、すこし見え方が違ってくるのではないでしょうか。

このように考えてくると、薬の効果をみるのに、もはや「同じ条件で比較することすら難しい」ことがわかってきます。

極論すれば、

” 薬の効果はあくまで一般論です。
すべて個人差があります。”

このようになります。

これらの事実をじゅうぶんに踏まえた上で、敢えて、どの薬が効くのかを考えてみたいと思います。

どの薬が1番効くのか?

“どの薬がいちばん効くのか?”

これは、大げさに言えば、花粉症に悩むみなさんの永遠の興味の的ではないでしょうか。花粉症で毎年のように苦しんでいる方、1年中のアレルギー性鼻炎でいつも鼻づまりで困っている方、鼻水が多くて1日中鼻をかんでいる方、などは薬を飲みたくても、あまりに薬が多すぎて、いったい何の薬をもらって飲んだら良いのかわからないと思います。

先に書きましたように、薬の効果には実にさまざまな条件が関与してきます。

ここでは、あなた自身の、

①花粉症のタイプ、
②薬の作用機序(どこに作用するのか)、
③薬の体内薬物動態 (吸収、血中濃度、半減期など)、
⑤ヒスタミンH1受容体の総数や活性型受容体の数、インバースアゴニスト作用など
⑥薬の血液脳関門透過性や
脳内ヒスタミンH1受容体占拠率、
⑦薬の化学構造式、
⑧鼻炎の重症度、
⑨鼻中隔湾曲症やポリープなどの合併、
⑩肝臓での代謝機能、腎臓からの排泄率、

などに個人差があることを十分に承知の上で、考えてみます。

” 重要なことがあります。この頁では、花粉症の治療薬としてよく使われる、鼻噴霧型ステロイド、点眼薬についての記載を避けています。
理由は、内服薬と鼻噴霧型ステロイドを一律に比較評価することが困難であることと、内容がとても煩雑になり理解しにくくなるからです。
鼻噴霧型ステロイドについては、後日改めて記載します。点眼薬については、専門医としての立場から深い言及は避けたいと思います。”

” もう1点重要なことがあります。抗ヒスタミン薬の効果という点のみを議論して副作用をあまり考慮しなければ、ポララミンなどの第一世代抗ヒスタミン薬やセレスタミン配合錠などが選択に上がります。しかし、ポララミンはd-クロルフェニラミンマレイン酸塩であり、脳内ヒスタミンH1受容体占拠率が50%を超えています。セレスタミン配合錠は1錠中にプレドニゾロン換算で1.6mgのステロイドが配合されています。このため副作用の点から、今回は比較対象薬から外しています。ご承知ください。”

結論は?

非常に乱暴な判定です。

各種論文のデータや私個人の経験値も含みます。

アレルギー性鼻炎や花粉症に対する抗ヒスタミン薬の強さは、

アレロック

ビラノア

ルパフィン

ザイザル

の順番でしょうか。

もちろん、これはあくまで100%科学的事実ではありませんし、経験的に多くの患者さんがそのような傾向を示したにすぎません。

抗アレルギー薬の効果を示した論文はたくさんありますが、2剤または多剤の「薬の効果を比較した」論文は意外に多くなく、対象となるアレルギー疾患の選定も一定ではありません。したがって、論文での報告のほかに、常に自分の経験値を上乗せしなければなりません。

このような考えから判断したのが、上記の順位です。じつに勝手な順番づけですが、薬の効果にこれだけ多くの個人的な不確定条件が隠されているのであれば、これもしかたありません。

花粉症診療では、最重症型などに対して、抗ヒスタミン薬と抗ロイコトリエン薬を同時内服することがあります。このような処方は単剤での比較になりませんので比較対象から外しています。さらに、喘息の合併などで抗ロイコトリエン薬(オノン、キプレス)を中心に内服治療する場合も多々あります。これらはあくまで個人個人によって処方内容が違ってきます。

最後の結論としてお伝えできる100%確実な言葉は、

” 薬は自分で飲んで効くかどうか確かめるのが確実です。

自分に合った薬が100%、1番の薬です。 “

じつに当然のことで、大変申し訳ありません。

みなさん、この当たり前の事実が、私たち耳鼻咽喉科医がずっと啓蒙していることです。

耳鼻咽喉科医は、花粉症の患者さんに、鼻粘膜を観察したり鼻症状を詳しく聞いたりして、これがいちばん効くかな?と思った薬を出します。ですから、あとは薬をのんだ患者さん自身が、その効果を判定しないといけないのです。

話し合いましょう

あなたのかかりつけの耳鼻咽喉科医と話し合いましょう。
主治医にどの薬を選んでもらうか、あなたが飲んでみたいか、よく話し合いましょう。

そのためには、飲む薬について、あなたは知らなければなりません。どんな薬かもよく知らないのに、「この薬が飲んでみたい」、「この薬を試してみたい」は、ほとんど根拠のないギャンブルだからです。

いちばん初めにお話しました、あなたがスーパーで野菜を買うとき、その野菜をよく見て品定めをしますね。その時の要領なのです。

まずよく知って、自分の目でよく見て確かめてから、買うのです。(= 飲むのです。)

処方された薬を自動的に飲むのではなくて、自分で良く理解して、決めてから、考えて飲むのです。

もちろん、花粉症で毎年同じ薬をもらって飲んでいる人は、それで全く問題ありません。それでも、ご自分の飲んでいる薬についてはきちんと知っておくべきです。

さあ、来年の花粉症の時期には、あなたは薬についての考え方が今までと少し変わっているかもしれません。

かかりつけの耳鼻咽喉科医師に訪ねる勇気を持ちましょう。

「先生、この薬、ほんとうに効くんですか?」

(写真はイメージです。)

院長 定永正之

定永正之(さだながまさゆき)
耳鼻咽喉科医師・耳鼻咽喉科専門医

先代から50年、宮崎県宮崎市で耳鼻咽喉科診療所を開業。一般外来診療から手術治療まで幅広く耳鼻咽喉科疾患に対応しています。1990年宮崎医科大学卒。「治す治療」をコンセプトに日々患者様と向き合っています。土曜日の午後も18時まで外来診療を行っていますので、急患にも対応可能です。
https://www.sadanaga.jp/

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