黄砂・PM2.5 -その1- -黄砂とは何か? PM2.5 とは?- -その対策は?-

黄砂って何?

黄砂やPM2.5という言葉をときどき聞くと思います。

花粉症と同じような症状を起こすことは知っていても、いったい何なのかじつはよく知らない人も多いのではないでしょうか。
今回は、ときどき外来で聞かれる、黄砂とは何ですか?という質問に答えたいと思います。
黄砂とは、もともと中国大陸の砂漠の砂のことです。中国は広大な国で、内陸部にタクラマカン砂漠、ゴビ砂漠、黄土高原など、日本国土の5倍以上の面積をもつ広大な砂漠があります。乾燥した砂漠の砂は軽く、強風で簡単に舞い上がり、上空の風で移動します。これを黄砂といいます。
でも砂がどうしてアレルギー症状を起こすの? と疑問に思いますね。
じつはこの黄砂、中国大陸から日本へと吹いている偏西風に乗って日本へやってくる途中で、中国の工業地帯を通過します。ここで、PM2.5という大気中を漂う細かな大気汚染物質が黄砂に付着します。

PM2.5って何?

PM2.5とは、大気中を浮遊する微小粒子状物質で粒子の直径が2.5μm(マイクロメートル 1μm=1 ㎜ の 1/1,000 )以下の非常に小さな粒子のことです。PMとは、Particulate Matter =微小粒子状物質。2.5は粒子の直径のことなのです。このPM2.5は、工業地帯からの排煙や火力発電所の排煙、喫煙や調理、家庭用ストーブなどから発生する煙などから、または自動車、船舶、航空機から排出される排気ガス中の窒素酸化物(NOx)や硫黄酸化物(SOx)などが大気中で太陽光やオゾンと化学反応を起こして生成されます。PM2.5は、炭素成分、硝酸塩、硫酸塩、アンモニウム塩、ケイ素、ナトリウム、アルミニウムなどが含まれており、その組成はランダムで地域や季節、気象条件によって変動します。PM2.5は黄砂にともなって日本にやってくるものだけではありません。国内の大気中にも存在しています。ただし国内のPM2.5は厳格な規制によって大気中の濃度がコントロールされています。これが黄砂の飛散とともに基準値をはるかに超えてしまうことが問題なのです。
では、どうしてPM2.5がそれほど問題になるのでしょう? 
それは非常に粒子が小さいことです。髪の毛の太さが約70μm、花粉の直径が30μm、ダニの糞が10μmですから、直径2.5μmのPM2.5がどれほど小さい物質かおわかりでしょう。
一般に、直径15μm以上の粒子は100%、直径4.5μmの粒子は85%が、鼻粘膜の粘液層に吸着されます。しかしながら、粒子のサイズが小さいために、PM2.5は呼吸によって簡単に肺の奥深くまで吸い込まれてしまうのです。微小粒子の直径が0.5μm以下であると逆に肺の奥からの排泄もされやすく、肺にとって蓄積しやすく危険なサイズは0.8-3.0μmと言われています。2.5μmはまさに最も危険なサイズだと言えます。
PM2.5は喘息や気管支炎、肺炎などの呼吸器系疾患を悪化させたり、肺がんのリスクを高めると言われています。さらに毛細血管から吸収されて狭心症や心筋梗塞、不整脈など心臓の病気の原因になったり脳梗塞を発症するリスクも高くなると報告されています。実際、黄砂の飛散が多かった日は喘息発作で緊急入院する人の数が増えたとの報告もあるくらいです。じつは煙草の煙もPM2.5の一種です。体に良くないことが理解できると思います。

黄砂とPM2.5がアレルギー症状を?

黄砂がPM2.5をくっつけて運んできます。でもPM2.5だけではありません。ハウスダストやダニなどの浮遊物質も黄砂に付着しています。これらが、花粉症と似た症状を起ここします。
くしゃみ、鼻水、鼻づまり、頭痛、目のかゆみ、皮膚のかゆみのほかに、PM2.5が肺の奥まで入り込むため、のどの痛みや咳、発熱、喘息様の症状などが起こります。また黄砂には細菌や真菌も付着していますので、これらが肺の奥で体の中に吸収されて炎症を起こします。黄砂の直径は4μmです。
黄砂が飛散する時期は、2月から5月が多く90%を占めますが、最も多いのは4月。春は偏西風が強くなるためです。反対に冬は砂漠の一部に雪が覆われ、偏西風も弱いため黄砂は飛ばず、夏は雨の湿気で黄砂が重くなり、飛散は減ります。
黄砂の飛散が多い2月から5月の時期が、花粉症の時期と重なるため、黄砂の飛散が多いときは花粉症の症状は重くなります。PM2.5に含まれるディーゼル排気粒子は、鼻粘膜の表面のバリアを壊し、花粉が鼻の粘膜に作用しやすくなりますので、黄砂が多くなると花粉症の症状が起こりやすく、またアレルギー症状もひどくなります。

どうすれば良いの?

花粉と同じく、黄砂の飛散をコントロールすることはできません。
黄砂は花粉情報と同じく、黄砂情報としてインターネット上に公開されています。まずは黄砂情報をよく見て、飛散の多くなる時期の外出を控えます。外出するときは、帽子・眼鏡・マスクの3点セットをしっかりと。同時に花粉もシャットアウトできるように。ただし30μmの花粉と違い、黄砂は4μm、PM2.5は2.5μmですから、マスクだけは花粉症用の不織布マスクでは黄砂対策としては不十分です。本来はN95マスクやDS1規格以上のマスクでないと黄砂を減らす効果はありません。でもN95マスクなんて外出のときにしてたら、息が苦しくて大変です。黄砂は、徹底的に避けた方が良さそうですね。また屋内では、PM2.5対応の空気清浄器もありますので、購入する際はメーカーに問い合わせて購入を検討するのも一案です。

黄砂・PM2.5情報は?

いくつかの有益なウェブサイトが存在します。

環境省大気汚染物質広域監視システム (そらまめくん)
https://soramame.env.go.jp/

気象庁 (黄砂情報)
https://www.data.jma.go.jp/env/kosa/fcst/

日本気象協会
https://tenki.jp/lite/

主なサイトを書きました。
これ以外にもありますので調べてみてください。

おわりに

黄砂対策はとにかく黄砂から逃げることです。インターネットから情報を収集して対策するのは花粉症と同じです。(トピックス: 花粉症について-その1-参照)
やむを得ず黄砂の飛散日に外出しなければならないときは、花粉以上に防護すること。マスクは特別なマスクを使用すること。黄砂を吸い込むことは、煙草の煙や自動車の排気ガスを胸いっぱい肺の奥まで大量に吸い込んでいることだと自覚してください。もう二度と黄砂の飛散日に深呼吸をしたくないと思うはずです。

黄砂によって霞む都市 (中国)

2021.12.21 14:18 黄砂情報  気象庁のHPより転載



院長 定永正之

定永正之(さだながまさゆき)
耳鼻咽喉科医師・耳鼻咽喉科専門医

先代から50年、宮崎県宮崎市で耳鼻咽喉科診療所を開業。一般外来診療から手術治療まで幅広く耳鼻咽喉科疾患に対応しています。1990年宮崎医科大学卒。「治す治療」をコンセプトに日々患者様と向き合っています。土曜日の午後も18時まで外来診療を行っていますので、急患にも対応可能です。
https://www.sadanaga.jp/

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