子どもの鼻副鼻腔炎

今回は、乳幼児の鼻副鼻腔炎について書きました。
小さい子どもさんの副鼻腔炎は、大人とかなり病態が違います。
その理由も合わせて読んでください。

子どもの鼻水

子どもさんは、よく鼻水を垂らしています。
昔ほど青洟(あおばな)を垂らしている子どもさんは、さすがに見なくなりましたが、サラサラの鼻水、どろっとした鼻水が鼻の入り口でずるずるしている子どもさんは相変わらずたくさんいます。
子どもさんの鼻水については、まずはこちらをご覧ください。
(子どものはなみず)

どうして鼻水が出るの?

子どもさんは、どうして鼻水が出るのでしょう。その理由をよく考えたことはないのではないでしょうか。
小さいから?風邪をひくから?免疫力が弱いから? じつは全て正しいのです。

小さな子どもさんは、風邪をひきやすいです。生後しばらくすると母体の免疫がなくなりますので、乳幼児は、風邪いわゆるウイルス感染に罹りやすくなります。

風邪のウイルスは、鼻粘膜に炎症を起こして急性鼻炎を起こしますので、急性鼻炎の症状として、初めはサラサラの鼻水が大量に出てきます。そこに、白血球やマクロファージが集まってウイルスを攻撃しますが、この時に死滅した好中球の色素顆粒で風邪の治りかけに黄色い鼻水がでます。(黄色い鼻水)

小さな子どもさん、とくに2歳未満の乳幼児では免疫力が低下しています。そのためウイルス感染を起こしやすく、鼻水が出やすくなります。さらに、乳幼児の鼻腔には中耳炎の3大起炎菌(肺炎球菌、インフルエンザ菌、モラクセラカタラーリス)がいつもいますから、これらの細菌の菌量が増えて、副鼻腔炎を起こします。3大起炎菌は急性中耳炎だけでなく、急性副鼻腔炎の起炎菌でもあるのです。細菌感染によって副鼻腔炎を起こした子どもさんは、これらの菌の種類によって、色のついた鼻水がたくさん出ます。(子どものはなみず)

また乳幼児では、当然ながら鼻腔がせまく、物理的に粘膜の腫れによってすぐに鼻づまりが起こります。鼻水が多くても鼻かみができないため、鼻汁の吸引をしてあげないと細菌をたくさん含んだ鼻汁が鼻腔に溜まってしまいます。鼻腔の通過も悪くなり、結果的に鼻副鼻腔炎が悪化します。

こうして、小さな子どもさんは鼻水が多くなるのです。

副鼻腔炎って何?

そもそも副鼻腔炎とは、どんな病気なのでしょう。
副鼻腔炎を本当に理解するためには、副鼻腔の解剖を知らないといけません。まずは、図で確認してください。

頭蓋骨の中で、脳と脳を囲む骨を除いた部分を顔面骨といいます。
基本的に副鼻腔は、顔面骨の中の空間です。
左右4つずつ、合わせて8つの空間があります。

図1 成人の副鼻腔
緑色: 前頭洞 黄色:上顎洞
水色:篩骨洞 紫色:蝶形骨洞

https://ja.m.wikipedia.org/wiki/%E5%89%AF%E9%BC%BB%E8%85%94%E7%82%8E

上顎洞は、ここにあります。

図2 上顎洞 (赤色)

https://upload.wikimedia.org/wikipedia/commons/b/b4/Rotation_Maxilla.gif

篩骨洞は、ここにあります。

図3 篩骨洞 (赤色)

https://commons.m.wikimedia.org/wiki/File:Rotation_ethmoid.gif#mw-jump-to-license

上顎洞、篩骨洞の位置を確認してください。
前頭洞、蝶形骨洞は、良い画像が見つかりませんでした。図1で確認してください。
蝶形骨洞は篩骨洞の後方、副鼻腔の最深部にあります。
前頭洞は、(額の)前頭部の空間です。(図1)

簡単にいうと、副鼻腔は骨に囲まれた左右4つずつの空間です。前頭洞、上顎洞、篩骨洞、蝶形骨の4つの空間が顔面骨の両側にあります。(図1)

小児、乳幼児では、この空間は成人よりもずっと小さくなります。

副鼻腔の骨の空間の内側には、薄い粘膜のカーペットが敷かれています。この空間には通常、空気が入っており、自然孔という通気路で、鼻腔と交通しています。自然孔を通って鼻腔から空気が入り、副鼻腔の粘膜が産生する粘液が自然から鼻腔に出ていきます。

これが、正常の副鼻腔の構造です。
この副鼻腔の空間に炎症が起こったのが、副鼻腔炎です。

なぜ起こるの?

副鼻腔炎は、自然孔が塞がって起こります。

副鼻腔は自然孔で鼻腔と交通しています。この自然孔は粘膜の孔なので、鼻腔に炎症が起こると粘膜が腫れて内腔が狭くなります。自然孔が塞がってしまうと、空気の交通が遮断されて、副鼻腔は高度の炎症を起こし、細菌感染を起こして粘膜はさらに腫れます。細菌感染の持続によって副鼻腔に膿が溜まり、自然孔は閉じているため、膿が溜まったまま鼻腔に流れていきません。
副鼻腔に膿が溜まったままになると、さらに炎症が続いて粘膜は腫れる悪循環になります。これが副鼻腔炎です。
副鼻腔炎は別名、ちくのう(蓄膿)症と呼ばれています。これは、膿が溜まるという意味です。

副鼻腔炎の原因は、一言で言うと「自然孔が塞がるから」なのです。

乳幼児の副鼻腔炎?

理解しやすい成人で説明しましたが、テーマは乳幼児の副鼻腔炎です。

乳幼児の副鼻腔は、成人の副鼻腔よりもかなり小さく未熟です。
上顎洞、篩骨洞とも胎生期から存在します。
しかし生下時には、上顎洞は眼窩の下の小豆大ほどの小さな空間でしかなく、篩骨洞はわずかに2-3個の小さな骨の蜂巣が存在するのみです。
その後、上顎洞は4歳までに急速に発育、篩骨洞は3歳から6歳までに急速に発育します。その後も成長を続けて、上顎洞は10歳すぎた頃、篩骨洞は12歳頃にほぼ成人の副鼻腔に近づくと報告されています。
一方、蝶形骨洞は2歳頃から、前頭洞は4歳頃から空間の発育が始まります。

上顎洞、篩骨洞は0歳よりわずかな空間に含気が認められますが、蝶形骨洞は1歳以降で、前頭洞は3歳以降で初めて空間に含気が確認されます。

したがって、急性中耳炎を起こしやすい2歳未満の乳幼児では、副鼻腔は含気した空間はあるものの、まだ非常に小さく未熟であること、自然孔も小さく狭いため、換気も不十分で塞がりやすいこと、鼻腔そのものが狭いため、ウイルス感染による鼻粘膜の炎症によって容易に多量の鼻汁と鼻づまりが起こり、自然孔が塞がって細菌感染による副鼻腔炎を起こすことが予想されます。

2歳未満の乳幼児の副鼻腔は、ほとんど未熟な上顎洞、篩骨洞しかないため、この空間の炎症が中心です。したがって、乳幼児では副鼻腔炎とせずに、鼻腔の炎症と同時に起きる副鼻腔炎という概念で、「鼻副鼻腔炎」と呼ばれています。

症状は?

乳幼児の子どもさんは、症状の訴えはありませんので、鼻水がずるずる出ていることがすべてです。水っぽい鼻水だけでなく、黄色い鼻水がのどに流れてくると、鼻水が細い気管支に流れ込み、ぜろぜろと気管支炎のような咳が続きます。

2歳以降でアデノイド肥大が進行してくると、鼻汁、鼻閉の症状が悪化します。

また、鼻副鼻腔炎から急性中耳炎を起こしてくることが多くあります。
2歳未満の乳幼児で、鼻副鼻腔炎があると、中耳炎は難治性になりやすいとされています。
(難治性の中耳炎)

診断は?

乳幼児では、年長児や小児のようにレントゲン検査が困難です。そのため、鼻腔内の観察だけを参考にして、鼻副鼻腔炎の診断を下します。

図4 副鼻腔炎のレントゲン写真
(黒⬆︎ 左上顎洞炎)

https://ja.m.wikipedia.org/wiki/%E5%89%AF%E9%BC%BB%E8%85%94%E7%82%8E

治療は?

基本は、急性中耳炎の治療と同じです。3大起炎菌が存在します。ただし、乳幼児の鼻副鼻腔炎の場合は、急性中耳炎を併発していないならば、抗菌薬を使わずに、局所治療を優先すべきと考えます。薬剤耐性菌の発生を予防するためです。

丁寧な鼻汁の吸引処置を繰り返して、鼻腔の通気を改善し、鼻汁中の細菌量を減量することが最も重要で、これが急性中耳炎の併発を予防することにつながります。

乳幼児の鼻水は、「とにかく吸ってあげること」が重要なのです。

抗アレルギー薬とカルボシステインの内服薬は、鼻汁の量を減らし、鼻腔通気を改善するのに効果的です。

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どうすれば?

小さな子どもさんに鼻水がたくさん出ているとき、お母さん方はとても心配されます。

風邪かも…。ちくのう症かしら…。もしかしたらアレルギー?

そんなときは、まず、優しく鼻水を吸ってあげましょう。
そして是非、かかりつけの耳鼻咽喉科医を受診してみてください。きちんと処置してくださると思います。

黄色い鼻水が垂れていますよ…
(イメージです)